萩原宗美容室 So-Hagiwara

モードカット

萩原宗 美容室 So-Hagiwara モードカット

昭和47年 女性モード社 2000円

ここ数年間、世界のヘアデザインに共通しているものは何でしょうか?
それは、極端に装飾的・技巧的なものは嫌われて、より自然らしさを求めたもの、つまり髪の流れや柔らかさを殺さないものが主流になって来ているということです。
これは、世界の大きな文化の動きと深い関係を持ったことですから、一時的なファッションとしてすぐに消え去る現象ではないようです。
では、この〝自然なスタイリング”の中で重要なポイントとなっているのは何でしょう?
いうまでもなく”カット”なのです。
あらゆるスタイリングにカットはつきものですが、〝自然なスタイリング”の中では、仕上がりのスタイルにはっきりとカットラインがみえていて、これがデザインの最も重要な部分になっています。
カットによってつくられたボリュームの変化、毛先の動きは、そのまま仕上げのスタイルに見事に生かされています。

萩原宗 美容室 So-Hagiwara


つまり、カットした後、複雑なセッティングによってコームアウトの効果を強調した従来のスタイリングとは、カット本来の役割として根本的に異なったものになって来ているのです。
カットは、”従”の立場から”主”の立場に立つようになっているのです。
誤解を恐れずにいえば、カットはオールマイティではありません。
どんなスタイルも、カットだけで全部できてしまうというのはいいすぎです。
カット技術の腕がまったくふるえないようなスタイルもあります。
カットの効果が、ほとんど隠れてしまうスタイルもあるわけです。
例えば女学生の三つ編みで、カット技術の冴えをみせようと努力してみてもおそらく無意味でしょう。
つまり、”カットの効果が仕上がりのスタイルの中に生かされるようなモード”をカットして、はじめてカット技術はその本領を発揮することになるのです。
しかし、私たちにとって都合のいいことに世界のモードの傾向は、どんどん”カット尊重”の方向に動いているのですから、その意味ではほとんどの、今日的モードはカットで創り出すことができるといえます。
ここで、この本の題名である『モードカット』とは? という問に、”カットの効果が仕上がりのスタイルの中にはっきり残されているようなモードを切ること”そして、さらに積極的にカットの効果が生かされるようなモードを自分から創り出して世界に広めることである”と自負できます。
こうした考え方で、ヘアスタイリングをとらえて行けば、自然とサロンでは、カットのお客さまが増えることになります。
ヨーロッパやアメリカでは、サロンに来なくなった若い人たちを再びサロンに呼びもどす方法としてカット中心のスタイリングが大当りしています。
またこの新しい傾向では、今までの、いわゆるセットは不必要であり、すべてブロワーによるセッティングがなされます。
この本でも、ブロワー仕上げが多く解説されているのはそのためです。
プラスそのほか、カット+コールドのテクニックも掲載してありますが、①カット② コールド③ ブロワー仕上げ、の三つを組み合わせて、私の店では「カッティングカール」という名前をつけ、営業面で好成績をあげていますがそういった、営業上実戦に大変役に立つ記事を多く取りあげました。
ですから、この本を読むコツは、”今日サロンで疑問を感じたこと” “昨日思いついたアイデア” “心に残った雑誌の写真”など、思いつくままにこの本に相談して下さって、解答してくれるページから自由に、仕事中でもまた通勤電車の中などでも、何100回となく気軽に見て勉強して下さい。
私が、この本を出版する自信を得たのは、女性モード社今成弘編集局長に「ワンポイント技術で良いから出版してみないか』と数年前に言葉をかけていただいたことです。
自分なりに研究していた「モードカット』をこういう一冊の本にまとめ上げて本当にうれしく思っております。
暑い折り、撮影、その他何かとご協力下さいました女性モード社出版部編集・カメラスタッフの皆さん。
デザイン問答に協力して下さいました武蔵野美術大学教授菱田安彦氏、それにモデルの皆さん方に、お礼申し上げます。