美容師ブログ 第4章 職人型技術先行型美容業界から近代上場企業型サロン経営を習得すべく「taya」に入社➀。

2023年現在、高円寺でオーナー美容師をしています。
東京の窪田理美容専門学校を卒業し、インターン(今はこの制度はありません)から美容師を約30年近くしています。
これから、僕の美容室が気になって来店するお客様のための動機の一つの「どんな美容師さんなんだろう?」という経歴、人柄を来店前に理解してもらうという事と自分の歴史の一つに「プロフェッショナルの美容師育成のスクールの先生時代」があるため、美容師を目指す人の参考になればという思いがあり、書き進めようと思います。


(2024年現在)厚生労働省が発表した美容師の離職率に関する統計資料によると、1年以内に離職するのが約50%、3年以内に離職するするのが80%、10年以内に離職するのは約92%で、他の職業よりもかなり高い離職率となっています。

僕は美容師になって30年近くになりますが、この問題に美容師1年目から30年近く向き合っています。
少なくても美容師になろうとした理由は人によってそれぞれでしょうが、自分の大切な時間(美容学校は2年間)・お金(美容学校は400万円近く費用がかかる)を費やしています。
美容学校の生徒全員が美容師になることは難しいと思いますが、この数字は驚くと思います。

高円寺・阿佐ヶ谷の美容室スタイラス

サラリーマンの世界では会社が離職率が高いとその影響は会社の存続・売り上げに直結することになります。
現場・人事・総務は一体となって働き方の改革や賃金・労働時間を見直すことになります。
しかし、零細企業であることが多い農家や飲食店や美容師さんの場合、専門職で精いっぱいの場合が多く離職率の問題の改善が遅れている現状です。
僕が美容師を始めた90年代はほとんどの美容室が小規模経営で、チェーン店・フランチャイズ美容室が90年代後半に出てきました。
僕は美容師になるための「技術」を身に着けることを優先して、今後2000年代以降は家族経営型の職業は淘汰されていくだろうと考えて、企業型美容室に努め美容経営を学ぶため転職することを決めました。

TAYA&CO 自由が丘 タヤ 美容室

自由が丘店で学んだこと

田谷美容室以前の僕は零細企業型の企業経営を取り入れていない美容室で働いていました。
今でも日本の小型店舗(10人以下の2,3店舗美容室)ではマネジメントができていない美容室がほとんどです。
後輩の美容師さんの話を聞いてきましたが、そのような美容室はほとんどオーナーさんや年配の美容師さん以外はアシスタントで2~3、4~5年で退職をしていきます。
自由が丘店のマネジメント

  1. 店長がマネジメントを理解している。
  2. エリアマネージャーが4,5店舗の各店長とコミュニケーションをとりバックアップしている。
  3. スタッフ全員が毎日のお店の売り上げ目標達成率を理解しながらサロンワークをして、自分の技術的な向上目標をもって課題に取り組んでいる。
  4. 効率がすべてではないが、休日・給与・働き方の見直し、一人当たりの売り上げ向上(生産性)を考える。

過去から現在の美容業界の現状

2000年代の美容業界はまだまだ売り上げもよく、美容業界に新規参入する美容学生も多かった気がします。
時代の勢いもあり、夜遅くまでモデルハントや撮影、練習会も行われていました。
美容室にコンプライアンス、生産性を求められてきた時代です。
まず、最初にTAYA自由が丘店で学んだことは店長を中心に会議が行われ、それぞれのスタッフが役割をもって会社的な組織運営をしていたことです。
普通のサラリーマンの方は当たり前にできていますが、零細企業型の美容室はオーナーや店長が一番上に存在し、トップダウン型で指示待ち状態です。
上下関係が確立され、親分子分の形態で朝も一番下の人間がお店のカギを持ち掃除オープンの準備、遅くに先輩が入ってくる。
技術が上の先輩がヒエラルキーが上のため、後輩は先輩から技術を教わる立場のため関係性が委縮しています。
技術の向上・目標意識も低く、お店やスタッフ同士で情報共有されていないため、お店全体ではなく個人で先輩に夜に残ってもらい練習を教わる個人の努力が求められます。
お店で技術に対する統一がなく、アシスタントをレベルアップさせる組織的な責任もないので離職率が高く、売り上げの低いお店ほど技術レベルが低く、接客・店販販売などの知識も薄い。
アシスタントの離職率の高さは自分が今現在どのような技術を学んで、それに対し美容室・組織がどのようにバックアップしてくれて、何年でスタイリストや店長、独立できるかという目標が提示できていない事が不安要素として高まり離職してしまうことでしょう。

高円寺・阿佐ヶ谷の美容室スタイラス

➀店長がマネジメントを理解している

美容組織は会社で言う課長が美容室の店長で、部長がエリアマネージャーに近いと思います。
まず、店長は社長から年初めに1年間の売り上げ目標を知らされます。
売り上げ、パーマ比率、カラー比率、トリートメント比率、原価比、店販売り上げなどの数字も記載されています。
店長の目標(義務)はお店全体の売り上げ目標の達成とスタッフ全員の人材育成の2つです。
僕は途中入社だったので経営がほとんど経験できずに店長になってしまい、本当に寝ることを惜しまず勉強させていただきました。
今でも覚えていますがマネージャーに呼ばれて最初に教えていただいたのがこの2つです。
自分がスタイリストの時は自分の指名数や売り上げに集中してサロンワークをしていましたが、店長は自分一人だけが売り上げを伸ばしてもスタッフの売り上げが伴わなければ評価されないと言われました。
もう一つのスタッフの育成ですが、これは自分は直接教えることもありますが組織の中では一歩引いている部分もあります。
それは、店長には右腕に「売上管理スタッフ」左腕には「技術管理スタッフ」がいます。
会社では課長補佐でしょうか?
「売り上げ管理スタッフ」…常に毎日の売り上げ目標達成率を意識し、店長と共有しながらスタッフとコミュニケーションをとります。
パーマ比率やカラー比率が低いとき、店販がなかなか売り上げが伸びないスタッフには「ロールプレイング」を行ったり、技術管理スタッフにも協力をしてもらい伸び悩むスタッフのサポートをしてもらいます。
「技術管理スタッフ」…カットやカラー、パーマ、トリートメント全般の技術に精通して社内、社外の講習を受けて、担当個人の性格も技術に強みを持つ人を任命する。
店舗内の練習会でスタッフの育成をサポートして、技術面で店長と協力し売り上げの目標達成を目指します。
新しい技術はメーカーと連携してお店での講習を依頼したりします。
「スタッフ管理」…お店全般のスケジュールを担当します。
お店の営業が不定休の場合はスッタッフ個人と話し合い、出勤・休日を決めていきます。
スタイリストとアシスタントが同じ日の休日希望を出した場合などは上下関係のヒエラルキーに捕らわれず決定します。
担当者はコミュニケーション能力の高いスタッフを選ぶ。
「在庫管理スタッフ」…お店で扱う商品の管理業務を行う。
毎日の営業で扱う商品が無くならないように在庫管理を行います。
ヘアカラー剤やパーマ剤など技術管理と連携し、時代に合ったメニューを考えスタッフが希望する商品の意見も店長とコミュニケーションをとり取り入れていく。
「小口管理スタッフ」…お店で扱う雑品管理を行います。
雑誌やティッシュ、花、季節の飾りつけイベントなど支出全般を扱い、スタッフとコミュニケーションをとり、スタッフからのニーズを店長と協力し営業に生かしていく。

このように、家族経営型の零細企業はあえて前年度成長率のような多角店舗や売り上げの追及を目指さず、自分のお店のニッチな価値観を大切に地域社会に貢献する手法もあります。
一方でスタッフの成長を考えるとスタッフの成長が売り上げの向上につながり、循環されるはずです。
離職率の高さはスタッフの成長が意識されないと満足度も下がり、給与面でも上がることはありません。
小規模の美容室ではオーナーがすべてを管理し、情報の透明化がされていなくスタッフは何となく毎日働いているという近代化とはかけ離れた職場で働いているのが現状だと思います。
それは、店長自身がマネジメントを理解できていないことが問題です。
2024年で70歳以上の年齢の美容師さんたちは勤め人での修行を2~3年程度で20代前半で結婚し独立していた時代だと伺いました。
60歳以上の美容師さんは結婚が20代後半になって独立が30歳前後。
僕が50代で結婚適齢期も30歳中盤で独立して、2000年代からはチェーン展開の美容室も増えて、あえて出店リスクを選ばずに、店長として働く美容師も多くいます。

美容師の働く道筋

  1. アシスタントしてスキルを身に着け、スタイリストを経て独立する道
  2. スタイリストとして働きオーナーと共に店長として経営に参加する道
  3. 大型店の美容師でスタイリストとして働き、その後、教育係やマネージャーのように全体をバックアップする道
  4. 面貸し美容師としてお店を独立するリスクを取らなかったり、2拠点生活のように価値観の合う場所数か所で働く道

働き方も多様化して、一般のサラリーマンのように一つの会社を勤め上げる人やスキルを上げながら転職をして仕事とプライベートの充実を目指したり、タイミーのような会社が脚光を浴びてきているように副業を推奨する会社も増えてきています。
美容師も昔はほかの仕事と併用しながらという道は考えられませんでしたが、美容師と他業種の2Wayで新しい価値観(服屋さんや飲食など)に触れて新しいヘアスタイルの捉え方ができてもいいと思います。