ビートニク Beatnik

ゲーリー・スナイダー Gary Snyder

カタルエナ

      ゲーリー・スナイダー

                 
街路には雨と雷鳴が打ちかかり水が溢れている!

私達は酒場でインディアンの娘と

膝半分を水に漬けたまま踊った

一番若い娘が着物をずり落して

腰までだしたまま踊った

大きなニグロの船荷水夫が椅子の上で膝にのせた娘と

うまくやっていた 眼の上まで着物をかぶせて

コカコーラとラム酒と水が床にひろがって

わめいた《カルタエナ 汚れた恋の泥沼》

そして自分より若いインディアンの売笑婦のために泣いてしまった

私が一八歳の時のことだ

それから屋台で買ったサンダルをはいて

水をはねつかせながら仲間を追っていった

船にもどって夜があけると船は遠くはなれた海にでていた

アレン・ギンズバーグ Allen Ginsberg

ある者らは、

ビールビン、恋人、シガレットの包み、ローソクなどと、

エクスタチィックにまた食欲に交わった。

そしてベットから転げ落ちて床や廊下をすぎ壁のところで気が遠くなりながら、

究極の幻想である女のアレの射精の意識から逃れながらも射精した。

ある者らは、

日没どき、うずいているたくさんの小女たちを誘惑して楽しんだ。

そして朝となると充血した赤い目をして家畜小屋で尻をのぞかせ、

湖で体を洗って日の出の楽しみを用意していた。

ある者らは、

かっぱらった自動車に乗ってコロラド通りを抜けて女を買いに行った。

N・Cすなわち、

これらの詩のかくれたヒーロー。

色事師でデンヴァーの美少年よ!

ジャック・プレヴェール Jacques Prévert

フランスの民衆詩人、映画作家、童話作家です。

アンドレ・ブルトン、ルイ・アラゴン、フィリップ・スーポーなどシュルレアリストと親交を深めます。

プレヴェールの詩により、シャンソンを50曲も作り、イヴ・モンタン、エディット・ピアフなどに楽曲を提供。

天にましますわれらの父よ
天にとどまりたまえ
われらは地上にのこります
地上はときどきうつくしい
ニューヨークの不思議
それからパリの不思議
三位一体も顔負けで
ウルクのちっちゃな運河
万里の長城
モルレーの小川
カンブレーの薄荷菓子
それから太平洋
チュイルリーの二つの泉
いい人たちとわるいやつら
この世のすべてのすばらしさは
地上にあります
あっさりと地上にあります
あらゆる人にあけっぱなしで
めったやたらに使われて
こんなすばらしさに自分でうっとりして
しかもそれを認めたがらない
裸をはずかしがるきれいな娘みたいに
してまたおそろしいこの世のふしあわせ
それは軍隊
その軍人
その拷問係
この世のボスどもと
その牧師 その裏切者 その古狸
それから春夏秋冬
それから年月
きれいな娘と いやな野郎
大砲の鋼のなかで腐ってゆく貧乏の藁。

ジャック・ケルアック Jack Kerouac

ジャック・ケルアックは、ウィリアム・S・バロウズ、アレン・ギンズバーグと共に、50年代アメリカで勃興したビート・ジェネレーション(ビートニクとも呼ばれる)を代表する作家として知られます。

彼の『路上』(57年)、『地下街の人びと』(58年)を始めとする著作は、自らのアメリカ各地での放浪生活体験を通して、物質文明や権威主義からの逃避と反抗を啓示し、多くの若者を人間の根源的な姿へと向かわせました。

60年代、その精神を継承するヒッピー・ジェネレーションが生まれ、サイケデリック・ムーヴメントへと進化。

当時から現在にかけて活躍したすべてのロック・ミュージシャンは、ビートニクからの恩恵を授かったといっても過言ではありません。

ロックやパンクの思想はビートニクに必ず帰結します。

ドアーズの元メンバー、レイ・マンザレクは語っている–「もし、ジム・モリソンが『路上』を読んでいなければドアーズは結成されなかっただろう」。