コム デ ギャルソン COMME des GARCONS

妹島和世 Kazuyo Sejima

東京都現代美術館の企画 妹島和代世による空間デザイン COMME des GARCONS。
コムデギャルソンの服には強さがあり、それは長年着ていなくても、物としての魅力が消えないんです。
時代とともにありながら、時代に関係なく存在できるというか。
建築の世界でも、快適であり、実用的なことは重要なんですけれど、ただとても美しいものでもあって欲しいと私は思っていますし、そういうものが建築でも実現できればいいなと思います。

オノセイゲン Seigen Ono

80年代初頭はニューウェーブ、ヒップホップとかミニマルが勃興し始めて、録音にもサンプリングやスクラッチが、ニューヨーク、ロンドン、東京で同時に起こりました。
ビル・ラズウェル、トレバー・ボーンと国境を越えてプロデューサーは互いに影響し合っていた時代です。
アナログテープを切り刻んだり、マイクを反対向きにセットしたり、22歳くらいでフリーランス私はちょっと年上のミュージシャンからは無理なことでも声をかけられやすい立場だったのです。
「おのくん、ちょっとこれやって、ライブ手伝ってくれない?と。もっと変な音できないの?」
それで経験を積んできたわけですから個性的な録音ならみんな集まってきました。
86年にヴァージンUKの専属アーティストと作家として10年契約を結んで作る環境も整っていました。
そして、コム・デ・ギャルソンから「誰も聞いたことのない音をショーに使いたい」という話を頂いた時、制作中のまだリリースされていない音源を提案しました。
川久保さんは「それは関係者などがすでに誰かが聞いていますよね」と。
本当に誰も聞いた事のない音を探していたんです。
そうするとライブか映画サントラのように台本に合わせて作曲していくしかない。
ライブは却下となり、当時から注目していたニューヨークの友人たち、ジョン・ゾーンやアート・リンゼイ、ジョン・ルーリーたちと、1曲ずつコラボレーションすることにしました。
当時の私はコム・デ・ギャルソンはおろかファッションショーがどんなのかも知らない。
台本もない、服はショーのぎりぎりまで見られない、それでも友人たちも「それは面白そうだ!」と一緒に想像しながら、実験的でもいろんなカラーがある方がいい、ということで制作を進めました。
もうひとつ重要なこととして、「洋服が美しく見える音楽を」というリクエストがありました。
後で聞いたところによると、ジャーナリストが何十もあるショーを回ると、センスがいい選曲であるほど時代の流れとかぶるので、どこへいってもまたあの曲か、となるそうです。
当時のショーのあとにプレス関係の方から「カセットが欲しい」と頼まれるたびにダビングしてお渡ししていたんですが、追加が多くさすがに大変になってきたので、5シーズンを編成し直して1989年にVOL1,VOL2としてリリースしました。
そのあとに2曲追加して1995年の黒いジャケットの2枚組CDです。
現定数作ってはなくなり、追加するたびに、井上嗣也さんのその時のアートワークに衣替えしたバージョンがあります。
あれから25年ですか?クラシックですね。
1996年からショーにまったく音のない、無音の時期がありました。
会場はカメラのシャッター音しかなくて、すごい緊張感だったそうです。
その無音の数シーズンのあと、また私に声がかかりました。
川久保さんからの要望とは「音なんだけど、音楽は使いたくない」と。
そこで概念として「音と音楽との境目」を決めるミーティングを重ねました。
例えば、トンという音時間軸上に、トン、トン、トンと並べると音楽になります。
その時のショーでは初めてサンプラーを使って即興のライブでやりました。
キーボードの鍵盤にいろんな音、フレーズをアサインしてあります。
その時仕込んだ音の断片は全部オリジナルで録ったものです。
ミュージシャンには譜面を用意して演奏を録音、そこまでは普通ですが、それをフラグメンテーションにしてキーボードで即興をしたんです。
連続すれば音楽になります。
音楽の断片を約40秒歩く間に1回、ほんの一瞬だけ使うというルールにしたんです。
何回か音が無いショーを体験した人たちは、それを聞いた時に「事故か?」って思った人もいたでしょう。
これが作曲された音楽であったことは川久保さんには話してなかったことです。
色々な洋服があって、ショーには色々なシーンがあります。
川久保さんは、前日、当日ぎりぎりまで、より強い方向に変更していく。
常に変化を続ける姿勢には私も多大な影響えお受けました。
その服からは未だに刺激を受けます。
私はレコーディングでアナログを使いこなせる最後のジェネレーションで、すごい速さで進化するデジタルも30年リアルタイムで体験しました。
だからマイクや音の扱いについて解らないことは何もありません。
最新のパソコンやデジタル技術を使えば、頭の中で考えられることは何でも具現化できますが、問題はそれで面白い発想まで生まれるか、イノベーションが起こせるかは別ですね。
ものづくりには、ほんのちょっとした違いや質感が重要です。
そのための素材とか正確さといいますか、目には見えない音では最近「ハイレゾ」というのですが、ディテイルのこだわりと精度こそが、意思を伝えるために重要なんです。