エリック・ロメール Eric Rohmer

恋の秋 Conte d’automne (1998年)

南フランスの小さな町、サン・ポール・トロワ・シャトー。
本屋を経営する主婦イザベルは、ローヌ渓谷の小さな農園でぶどう酒造りに打ち込んでいる親友マガリが独り身でいるのを心配していた。
マガリの息子レオの新しいガールフレンドの女子大生ロジーヌも奇しくも同じことを心配。
イザベルとロジーヌは、それぞれ勝手にマガリの恋の相手を探そうとする。
イザベルは新聞の結婚交際広告欄にこっそり投書、ビジネスマンのジェラルドと身代わりでデートし、彼をマガリにそれとなく会わせるように事を進めていく。

緑の光線 Le Rayon vert (1986年)

独りぼっちの夏休みを何とか実りあるものにしようとする若い女性の旅を、優しい南仏の光に包まれる幸福を観る者にも味わわせながら、おっとりと軽妙に語っていくロメールの技に感服してしまう、最良のバカンス映画。
恋に恋する彼女の理想は高く、昔からの男友達も、新たに現われた男性もなんとなく拒んでしまう。
この優柔不断さを“あるある”と頷いてしまう向きも多いのではなかろうか。
題名の“緑の光線”とは日没の際、一瞬見えると言われる光のこと。
もちろん、それを見た者は幸福を得られると言いならわされており、主人公は愛する人と共にその光を見るのを夢見ているのだが……。

友だちの恋人 L’Ami de mon amie (1987年)

パリ郊外のセルジー・ポントワーズの市役所の職員食堂で出会った市の文化事業部に勤めるブランシュと、学生最後の夏休みを迎えたレアの二人は、たちまち意気投合した。
昼休みに市営プールでレアに水泳の手ほどきをすることになったブランシュは、そこでレアと彼女の恋人でスポーツ器具デザイナーのファビアンの友人で、ハンサムな電力会社の技師アレクサンドルと出会い彼に好奇心を抱くが、内気な彼女は自分の感情を表に出すことができない。
折りしも時はヴァカンス。ファビアンに嘘をつき、他の男友だちと休暇に出かけたレアにとり残された彼は、街で偶然ブランシュと出会い、彼女をウィンド・サーフィンに誘う。

満月の夜 Les Nuits de la pleine lune (1984年)

パリ近郊の閑静な住宅地に建つモダンなアパート。
そこに暮らすルイーズとレミは、結婚はしていないが夫婦同然だ。
しかし、口喧嘩が絶えない。
夜遊びが好きで自由を謳歌したいというルイーズに対し、レミは実直で地味な性格。
毎朝ジョギングに精を出すという健全派だ。
ルイーズを独占したいレミには、ルイーズの行動が気になって仕方がない。
ルイーズはそうしたレミとの息のつまるような生活に変化をつけるために、パリに一人の部屋を借りることにする。

美しき結婚 Le Beau Mariage (1982年)

パリで美術史の勉強をしているサビーヌは画家で妻子持ちの愛人シモンに嫌気がさし、結婚を決意する。
理想は医者と結婚して好きな絵の仕事を続ける親友のクラリスのような生活。
クラリスはサビーヌに従兄弟で弁護士で独身のエドモンを紹介する。
サビーヌが古美術商で仕事をしていると聞いたエドモンは、ちょうど探している陶器があると話す。
彼は急用で挨拶もそこそこにパリに帰るが、クラリスの話だとどうもサビーヌが気に入っているらしい。

飛行士の妻 La Femme de l’aviateur (1981年)

法科に通う苦学生フランソワは夜はパリ東駅の郵便局で働いている。
彼には少し前まで付き合っていたOLのアンヌという恋人がおり、いまだ未練たらたらの節がある。
そのアンヌには妻子持ちの愛人クリスチャンがいたが、いきなり彼女に絶縁をせまってきた。
フランソワはアンヌにつきまとうが相手にされず、偶然見かけた、別の女といるクリスチャンを追跡するうち、同じバスに同乗していたリセエンヌ、リュシーが彼の尾行に気づいて、さらにその後ろをついてくる……。

冬物語 Conte d’hiver (1991年)

夏のブルターニュ。
フェリシーは、シャルルと恋に落ちる。
パリへ戻る駅のホームで、彼女は、アメリカに料理の修行に行くと言う彼に自分の住所を教えた。
5年後の12月14日。
フェリシーは、彼女が勤める美容院のオーナーで、彼女の男友達のひとりのマクサンスに、妻と別れ、ヌヴェールで再出発するから一緒に来てほしいと言われ、承知した彼女は娘エリーズと翌晩ヌヴェールに出発した。
12月16日。
マクサンスと観光する道すがら、フェリシーはシャルルとの一件を話す。
彼に教えた住所が間違っていたこと。

春のソナタ Conte de printemps (1989年)

ジャンヌは高校の哲学教師。自分のアパルトマンを数日間いとこに貸すつもりが、乗っとられた形になってしまい、恋人は出張中、行き場もなく困っていた所、パーティで音楽学校へ通うナターシャと知り合い彼女の家へ。
ナターシャの父イゴールは彼女と同年代の恋人エーヴと同棲中で、家には彼女一人。
エーヴと仲の悪いナターシャはどうやらジャンヌを父の新しい恋人にしたがっているらしい。
翌週末、ジャンヌはナターシャと共にフォンテンヌブローの別荘に出かけるが、イゴール、エーヴとはち合わせ。
気まずい空気の流れる中エーヴは一人帰ってしまい、ナターシャも恋人と出かけ、ジャンヌとイゴールが取り残される。

海辺のポーリーヌ Pauline à la plage (1983年)

ノルマンディーの避暑地の夏。
15歳のポーリーヌは、年長の従姉マリオンとともに、夏の終わりのひとときを海辺の別荘で過ごそうとやって来た。
ファッション・デザイナーで、離婚の経験もあるマリオンに早速、恋の話をきくポーリーヌ。
海辺に出かけた二人は、昔マリオンのボーイフレンドだったピエールに出会った。
彼は純情な好青年だが、いまだに学生を続け、そしていまだにマリオンに恋していた。
ピエールの知りあいで南の島の民族学者というふれこみのアンリを、ピエールはマリオンたちに紹介した。

夏物語 Conte d’été (1996年)

数学の修士号を取得したガスパールはひとり、バカンスでディナールにやってきた。
彼はクレープ専門店でウェイトレスをしているマルゴと友達になる。
彼女は人類学の博士課程で、ブルターニュの民族音楽を調査しながら、休みのあいだ叔母の店で働いている。
恋人は考古学者で、海外にいるという。彼は実はミュージシャン志望なものだから、彼女の民族音楽の調査などについて行って友情を深める。