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石川直樹 Naoki Ishikawa

登山靴が雪を踏み締める音。
肺に酸素を取り込もうとする息遣いや、都会では見たことのない光のまぶしさ。
写真家·石川直樹が、愛機プラウベル· マキナ 670 で撮影したヒマラヤの写真を見ていると、彼がそこで感じたことを追体験しているような感覚を抱く。
地球を垂直·水平に、膨人な距離を移動し、濃密な旅を続ける石川。
20代から通い続けた最も好きだという山岳地帯、ヒマラャ山脈の最高峰エベレ
ストと、 第2位の高峰 K2の写真を収めた超人型作品集を2019年12月に上梓した。
威厳ある山の写真は、自ら登頂に挑む彼にしか撮れない迫力に満ている。

地球のエネルギーに接して、自分の弱さや小ささを知る。
今夏も、石川はヒマラヤへ向かった。
2015年に標高7300 m地点で引き返したK2の登頂を再度目指すためだ。
結果、今回は標高 8000円m地点までたどり着いたが、天候やさまざまな条件に阻まれて撤退せざるを得なかった。
しかし、石川はそこで引き返さなかった。
ガイドのシェルバ族から同地域の 80000 m級の高峰、 ガッシャーブルムⅡに登らないかと誘われて、K2断念直後に進路を変更。
登頂に成功した。
「プレートとプレートがぶつかってできたヒマラヤ山脈は、 地球のエネルギーが最もダイナミックに発露している場だと思います。その地球の容教ない力を日の当たりにして、自分の弱さや小ささと年に1度、身をもって知る。そうすることで、自分はゼロに戻って生き直していると強く感じるんです。登りかけた山はなんとか登頂したい。 K2も、また行きたいですね」
グリーンランドやアラスカを含む北極の文化圏や、世界の大陸に点在する10カ所近い洞窟壁画の記録。
中判カメラを携えヒマラヤの標高 8000 m級の山の登頂に挑み、フィルムで撮る。
今年1月、石川は初台の東京オペラシティアートギャ ラリーで個展 「この星の光の地図を写す」を開催。
10代の頃から現在まで、20年以上のこうした活動を見せる展示は、2016年年以降日本全国を巡回し、3月に最終地,東京で暮を下ろした。
くしくも初台は石川の生まれた地。
この展覧会はこれまでで最も印象に残るものだったという。
石川は世界の誰もがなしえないやり方と独自の視点で写真を撮り発表しできた。
この個展によって、 彼が写真家として歩き続けた膨大な距離と時間が比類のないものだと、多くの人が知ったことだろう。
「旅する時は、 事前にテーマを設定しないで、常に自分の身体が反応したもの全部を撮るようにしています。まるで見たものすべをスキャンする勢いで。その膨大な写真から、鉱脈のようなテーマを見つけ出しています」
人類学の フィールドワークのように、その土地や人々が発するものに耳を傾け、撮影し、文を書く。
約20年にわたり発表してきた写真集や書籍、著述から、変わらぬスタンスがうかがえる。
「旅をすること、写真を撮ること、そして生きること。 僕にとってすベてが 分かち嫌く結び ついている。」
石川が 呼吸するかのごとく撮り続けた地球は我々の頭を摘さぶり、 視座を拡げる革命的な力をもつのだ。
山からはいつも力をもらっています。
地球全体で考えると、単なる凹dの凸に勝手に人間が名前を付付けた場所なのですが、そこにー年のうち3カ月はど死力をを尽くして登ることで、人間の営みについて考えさせられます。
一方で日本にいる時は、 さまざまな地域で写真術のワークショップを開くなど、ローカルの活動に力を入れています。
撮り方を教えるのではなく文化や暮らしを見つめ直し、地域社会の将来に少しでも貢献したい。
そして細く長く続けるよう努力する。
それは、アートの最前線が地域にあると、僕自身が思っているからです。
僕たちは同じ世界にいながら、いろいろなレイヤーの中でそれぞれ生きています。
自分が見てきたレイヤーとは異なる場所に滑り込むと、 見慣れた風景が今までとは違う、新しい風景に変わる。
たとえば、退屈な場所のはずが異邦人の視点からは魅力にあふれて見えたり、人気の観光地が地元目線に立つとつまらなく思えたり。
常に変化を受け入れていきたいんです。
そうすることで周りが変わらずとも、 新しい世界が白然に拓けてくるので。
現在は北海道の知床半島周辺や香川県高松市などで、 みんなで冊子をつくったり、アーティストと展覧会を企画したりしています。
写真を撮る行為を通して、地域の人の目が研ぎ澄まされていく。
そうすることで発信するものの力も自ずと強くな っ ていくでしょう。
小さな地域でのローカルな活動と、極地遠征のような地球規模で人間の営みを考え直す旅は、僕の活動の両軸になっています。
そのふたつがあってこその自分ですね。