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昼顔 Belle de jour YVES SAINT LAURENT イヴ・サンローラン

昼顔に見るファッションと女性像。
この作品は1960年代のシネ・モード特集に必ず登場する名前です。
主演がカトリーヌ・ドヌーブ、衣装はイブ・サンローラン、監督がルイス・ブニュエルという当時の最高人気のキャスティングでした。
60年代カトリーヌ・ドヌーブのクール・ビューティーとしての評価が確立した映画と言われています。
ヴェネツィア国際映画祭でグランプリを受賞したのは、イヴ・サンローランが衣装を担当したことで、この映画が品格あるものに仕上がったためとも指摘できるだろう。
外科医の妻として裕福な暮らしを送っているドヌーヴ扮するセヴリーヌの二面性(葛藤・分裂)が主題だ。
優しい夫に暴力的な懲罰を受ける悪夢をしばしば見る可憐な彼女は、あるきっかけで、売春という職業が世の中にあることに強い興味を持ち、昼間だけ「昼顔」という源氏名で高級娼婦で客を取る仕事を始める。
見ず知らずの男に抱かれることで、セヴリーヌのある部分は満たされていくが、という話の展開なのだけれど、注目したいのは、貞淑な妻である時間も。娼婦の館に出勤するときも、セヴリーヌの服装は変わらないのだ。
いつも身だしなみのよい、知的で堅い印象のスーツやシャツドレス、ミリタリー調のコートなどにローヒールパンプスをさっそうと着こなす。
唯一の変装の小道具はサングラスだが、もともとセヴリーヌには娼婦になる=身を落とすという意識がほとんどないので、変装をするでもなく、あきれるくらい、堂々としている。
娼婦たちはそれぞれ経済的な状況から働かざるを得ない女性たちなので、セヴリーヌの見るからに高そうな服装が気になって「仕立てのいい服を着ているのね。カルドゥッチよ!」と言ったりするがセヴリーヌは気にせず、次に来るときも上質な服を着てくる。
いや、もしかすると、これは彼女にとっては、「戦闘服」なのかもしれない。
娼婦と言えば、男に媚びるようなセクシーで肌触りのいいドレスなどを想像してしまうが、その期待される解でないところが、この映画の骨格になっていて、特異な魅力を形作っている。ドヌーブの演技もまたコケットリーを排除したポーカーフェイスぶりを貫いて素晴らしい。
イブ・サンローランは1961年に25歳で自身のメゾンを開いた早熟の天才だが、カトリーヌ・ドヌーブとはドヌーブの当時の夫でファッション・フォトグラファーのデヴィット・ベイリーを介して知り合い、以来、ドヌーヴとサンローランの友情はサンローランが死ぬまで続いた。
この「昼顔」の話があった時も、ドヌーブ自らサンローランを推薦したのだろう。
サンローランにとって、60年代というのは格別な時代で、モンドリアン・ルック(1965)、スモーキング(1966)サファリ・ルック(1968)など歴史的な代表作はこの時期に出し尽くした感さえある。
1966年には初のプレタポルテ「イヴ・サン・ローラン・リヴ・ゴーシュ」のブティックをサンジェルマン・デ・プレに開き、パリモードの新しい扉を開けた。
フレッシュで中性的で、技巧に走ることなく美しい造形にまとめ上げるサンローランのクリエイションが映画の中で花開いたのが「昼顔」だと言える。