ジャックス/Jacks 高円寺の古着文化のルーツ

ジャックス メンバー
早川義夫 昭和22年12月15日 リード・ヴォーカル、サイドギター
水橋春夫 昭和24年2月2日 リード・ギター、 サイド・ヴォーカル
谷野ひとし 昭和22年10月10日 ベース
木田高介 昭和24年1月8日 ドラムス、 フルート

JACKSのLPのための原稿 早川義夫

僕らの音楽が、ある時、 鏡になって、暗やみで聞いているあなた自身を写し出したら、 素晴しいと思います。
僕らの音楽を聞いて僕らをさぐろうなんてことは、つまらぬことだからおよしなさい。
あなたはあなた自身を写し出すために、鏡の底に降りていって下さい。
見ている者がいつか見られる者に変ってゆく時の、恐怖を味わっていただきたいのです。
あなたが、何かに飢えている人なら、ある時ベースの音があなたの足音に聞こえたり、フルートの風が胸の中でなってたり、予期せぬ時にギターの音で飛ばされていったり、音程の悪いメロディに沈みイライラしている時、激しくドラムに打たれて下さい。
暗やみの中で、 まないたに横たわる鯉のよう、美しく死にたいものです。
あなたたちジャックスもアングラでしょう?
そう言われてどう感じますか?
別に僕らが言いだしたわけじゃないんですよ。
アングラっていうのは、 放送局や新聞記者にも眼のとどかぬところで何かをしはじめている人たちのことで、 まず僕らは違うでしょう。
マスコミがはやらすためにつけた代名詞でしょ。 そんな質問は、 あなたたち自身で答えて下さいな。
僕らが、 ジャックスとなって一年が過ぎました。
フォークジャンボリーにおいてははみだされ、またゴーゴー喫茶においてもしっくりいきません。
発表する場所が少ないうえに、 何々を目標としていますでないから、つかまれにくいのでしょう。
プロにならないでほしいとの声をよく聞きます。
しかし、どこまでが演出なのかわからぬマスコミの世界に、ジャックスは入ってゆきたいと思うのです。
マスコミがきたない、 プロがきたないといって、アマチュアでとおしますなんていうのは駄目です。 学校だって、家庭だって、会社だってどこだってきたないんです。
きたない世界でありたくないから、自分自身がそこに入ってゆかなければならないと思うのです。
でも、これはとても時間がかかることです。
いつも、 完全燃焼というわけにはいきません。
一度信じたら信じとおして下さい。
まわりが変ってゆくことは、たいしたことでないんです。
僕らの心の底に流れる泣きや、怒りや、願いは歌になってあらわれますが、外側のジャックスはマスコミにつくられてゆきたいのです。
僕らの心の底は、ないものねだりをするだろうけど、 僕らの外側は純枠なんてないと思ってます。
そして、僕らは何々を解るということや、何々を知るということだけが人生でないと思ってます。
もっと感覚的に歌を愛してゆきたい。
あれは音楽じゃないとかいう発言のは、 何々は何、何々は何と頭の中でノートをつくっている人なのです。
そのように、 ころがろうともしない石になった固定観念をすてましょう。
すべてのものをいつも新鮮な眼で見ることができるよう、子供に戻るべきです。
僕らはひとりひとり違いを知っている。
つきせまったところでなおもひろがってゆく、 ひとりひとりの違いを知っている。
偶然あつまった四人がそれぞれ自分しか出せない音を出すため、 わがままで生意気でなければならないと思うのです。
そして、僕らは誤解されやすい立場にいつもいることを知っている。
理屈で考えりゃ僕ら自身だって、なんだこりゃとなるから、 僕らはあまり語り合わない。
ひとりひとりのセンス、 感覚だけを、それも部分的でしか信じ合っていない。
何年かさき 僕たちの身体が職人になっても、心の底は子供みたいな夢で
いっぱいにしていたい。 傷いっぱいつけておよめさんにゆく、傷いっぱいつけておむこさんにゆく。
四人とも、音楽の腕をならすためにはじめたわけでないから、 生きるってことも、うまく生きるために生きているのではないから、俺達、 生きてゆくのぶきっちょだな、と何故か歌うだけなのだ。
あなたも、 あなたの動くという形容詞を動詞に変えて下さい。

  • マリアンヌ
    相沢靖子の作詞に早川義夫が作曲。 久しぶりにドラムと歌のリズムが合った演奏でした。
    この曲がジャックスのレバートリーの中にあるので、ジャズ好きの木田君は参加したようです。
    谷野氏のベースもさえています。
  • 時計をとめて
    いつか告白した。 お嫁にいってしまったお姉さんに捧げたんです。
    作詞作曲 水橋春夫。 リード・ヴォーカルとサイド・ヴォーカルを歌っているのはもちろん水橋君。
    マイクの前で口を開く時のピチャという音が録音されています。
  • からっぽの世界
    早川義夫の18才のおわりに書かれた作品。タクトのレコードの方がきれいすぎるという意見がきかれますが、こちらの方は演奏に慣れて来たせいか、少々荒っぽくなっているようです。
    水橋君のリード・ギターと木田君のフルートが違う味を出しています。
  • われた鏡の中から
    演奏と歌を別にとるので、音程の悪いのをごまかされないようです。
    早川義夫の大切な作品の一つ。
  • 裏切りの季節
    これは始めてピアノによる作曲で、 浮かんできた言葉をならべてで早川義夫の作品。
    ベース・ギターの谷野氏、 もっとかつやくしたらいいと思います。
  • ラブ・ジェネレーション
    早川義夫の好んでいる作品の一つ。
    昔から骨にかわり、また昔に戻って昔で終る曲。
    リード・ギターが不思議な音を出しています。
    谷野ひとしの作品。 他にDm 4-50という曲もあるが、谷野氏の詞は、俺を逃がしてくれ、俺を助けてくれとか、どこまで堕とされてゆくのかというように受身の言葉を使っています。
    また、どうしても自分で歌いたくないと言いはります。
  • どこへ
    相沢靖子の詞で木田高介が作曲。
    ドラム、ピアノ、リード・ヴォーカル、サイド・ヴォーカルを木田君がきざっぽく演じたので四重録音。
    担当ディレクターの朝妻一郎氏は何故かはしゃぎだし、 はだしになってがやを手伝いました。
  • 遠い海へ旅に出た私の恋人
    機械の調子でリード・ギターの音ののびが、 最高に出ていませんが、木田君のシンバルの音とバイブが助けています。
    歌い方が悪いと水橋君が言っていましたが、 早川君はいっこうに反省していないようです。
    相沢靖子作詞、 早川義夫作曲。
  • つめたい空から500マイル
    LPの中で一番新しい曲。 早川義夫の詞に水橋春夫が作曲。
    オルガンを木田君、歌と朗読を水橋君がやっている。
    水橋君の持ちえていないある一面が素晴しく現われているようです。