ジャック・ドゥミ Jacques Demy

都会の一部屋 Une chambre en ville

天使の入江 LA BAIE DES ANGES

想い出のマルセイユ Trois Places pour le 26

マルセイユ・オペラ座で、彼自身の半生を描いたミュージカル“現代のモンタン”に主演するため、ここマルセイユの地に20年ぶりに帰郷したイヴ・モンタンは、過去の甘くつらい恋を振り返る。
彼が2歳の時、一家はファシズムを逃れ北イタリアに移住した。
11歳の時から働きに出、やがて造船所の工員として働いていた頃、彼にはミレーヌという恋人がいた。
しかし彼が自分の夢を実現させるためにパリへ旅立った後、彼女はランベール男爵と結婚してしまったという。リハーサルを始めたモンタンの前に、特別公演の切符が欲しいというマリオンという名の娘が訪ねてくる。
彼女はミュージカル女優になる夢をモンタンに語るが、彼はマリオンがミレーヌの娘であることを知らない。

新・七つの大罪 Les 7 Peches Capitaux

〔怒りの罪〕平和な日曜日、若夫婦の朝食のスープの中の一匹の蝿が大喧嘩のもととなった。
それは隣に波及して町はスープだらけ。とうとう果ては原爆、地球の破滅……。
〔羨みの罪〕田舎の小ホテルの女中ロゼットはたまたま泊ったスター、リタの宝石に羨みで一杯。
ボーイのリリの口説も耳に入らない。
だがリタの愛人ジャスマン氏の愛を得て豪華な宝石をつけ、客としてホテルにやって来た彼女はリリの口説を懐しく思い出し、あの時とどっちが幸福かしらと考える。
〔大食いの罪〕親戚のペペが消化不良が昂じて死んだという電報に、一家はガタボロ自動車に飲食物をしこたま積込んで葬式に出発。

ロバと王女 Peau d’ Ane

とおいむかし、銀色のお城に王さまと美しいお妃さまととても素敵な王女さまがいた。
ある冬の朝、お妃さまが亡くなられ、死にぎわに、王さまに向かって結婚する場合は自分よりも美しい女性を選んでほしいといいのこした。
しかしお妃さまより美しい女性というのはこの世でただひとり王女さまだった。
自分の娘に恋い焦れた王さまは、王女さまに結婚をせまった。
不倫の恋に悩んだ王女はリラの妖精にすべてを打ち明けた。
リラの妖精の助けを受けて王女は王さまにわざと不可能な条件を要求した。

ロシュフォールの恋人たち Les Demoiselles De Rochefort

フランス西南部の海辺の街ロシュフォールは、年に一度の海の祭を二日後にひかえて、陽気に浮き立っていた。
青く澄んだ空、緑の樹々、白い壁、こんな街では誰もが恋をし、生きる歓びにひたっていても不思議ではなかった。
美しい双児の姉妹のソランジュとデルフィーヌは希望に燃え、自分の道を歩んでいた。
ソランジュは音楽家を、デルフィーヌはバレリーナを志していたが、彼女たちにはもう一つの夢があった。

ローラ LOLA

陽気に騒ぐアメリカの水兵で賑うナントの港町。全てにうんざりしたローランは自由を求めて旅に出たいと思っていた。
水兵フランキーは仲間と共にキャバレー、エルドラドにくり出す。
目当ては踊り子のローラだった。
ローランは書店でデノワイエ夫人と娘のセシルと知り合い、娘と同じ名の幼馴染みのことを思い出す。
ローランは紹介された仕事先でローラことセシルと短かい再会をする。彼はそこでヨハネスブルグに行く仕事を引き受けた。
デノワイエ夫人はローランの訪問を喜んでいたが、ローラとの約束が迫っているローランは慌しく辞去する。
翌日のセシルの誕生日にまた来ると言い残して。
ローランとローラは久し振りに2人だけの時を過ごした。
彼女は14歳の初恋を語り始めた。

モン・パリ L’EVENEMENT LE PLUS IMPORTANT DEPUIS QUE L’HOMME A MARCHE SUR LA LUNE

パリの下町はモンパルナスに、一組の恋人が住んでいた。
男の名はマルコ・マゼッティ、自動車学校の経営者だった。
女の名はイレーヌ、ひとり息子のルカがいる小さな美容院のマダム。
彼女の輝くような金髪はお客様の憧れの的だった。
いずれ正式な結婚を、とは思っていたがお金もヒマもなかった。
それでも二人は充分に幸福だった。
ところで、この数日間、マルコは身体の具合が悪くて悩んでいた。
吐き気、目まい。
折角イレーヌとルカを連れてミレーユ・マチューのリサイタルを聴きにきたというのに、また気分が悪くなるという始末だった。
そんなマルコの身を気づかうイレーヌは、大きな瞳に涙を浮かべて“あなたが死んだら生きていけないわ、お願いだからお医者様に行くって約束して”と哀願する。

モデル・ショップ Model shop

兵役を前に、一目惚れして購入した車の代金、1ooドルを金融会社に返済しなければならないジョージ。
建築家を目指しながらも将来にも恋愛にも情熱や執着を持てずにいる。
一緒に暮らしているグロリアは結婚して子供が欲しいと安定を望むが、彼は拒否する。
若くはないが美しいモデル、ローラと出会ったジョージは彼女に一目惚れ。
離婚しフランスへ帰る資金をためているローラに、友達から借りたお金渡すジョージ。
翌日、ローラに電話をかけたジョージは彼女がすでにパリに発ったことを知る。

ベルサイユのばら LADY OSCAR

一七七五年、ルイ十五世治政下のフランス。
代々国王一家の警護にあたるジャルジェ将軍家に一人の女の子が生まれた。
しかし女ばかりの一家の将来を案じる将軍は、その子にオスカルという男名を付け、軍人として育て上げる決心をした。
遊び相手も男の子がよいと、アンドレを呼びよせた。
時あたかもヨーロッパを二分していたフランスのブルボン家とオーストリアのハプスブルグ家との間で和解の気運が高まっていた。
オーストリアの皇女マリー・アントワネットとフランス皇太子の結婚は、ヨーロッパの平和を願う人々に歓迎された。
こうしてアントワネットはベルサイユ宮殿に移り住み、数年後ルイ十六世の王妃として宮廷に君臨することになった。
立派な軍人に成長したオスカルは近衛隊に配属され、幼なじみのアンドレもオスカルを守るべく、王宮の厩番の仕事を与えられた。

ハメルンの笛吹き THE PIED PIPER

人々に愛と平和と自由を与えてくれる旅芸人の一座が馬車に乗ってハメルンへ向って行く。
だがハメルンの町は、北ドイツで流行っているペストから町を守るために誰も入れてくれない。
どこからともなく、一座の笛吹きの美しく不思議な音色が広がり、この音を耳にした町長の娘リサは、今までの重病がふっとんでしまう。
彼らは何なく町の中へ……。
リサが元気を取り戻したので、親の決めた婚約者で領主の息子フランツとの結婚式の準備に大わらわ。しかし、リサはフランツが好きではなかった。
そんな彼女に、ビッコのギャビンが、自分で描いたリサの肖像画を持ってやってきた。
彼はリサに恋をしていたし、リサも彼に好意を持っている。
結婚式の日、寺の鐘は鳴り、町民は祝福してくれたが、リサとギャビンは悲しかった。

パーキング Parking

シェルブールの雨傘 (1963) LES PARAPLUIES DE CHERBOURG

フランス北西部の港町シェルブールで幸せな恋愛関係を育んでいた傘屋の娘ジュヌヴィエーヴと自動車修理工のギイのもとに、徴集礼状が届く。
出兵前夜に結ばれ、ギイとの愛の結晶も宿したジュヌヴィエーヴだが、ギイの不在は彼女にとって堪え難いものだった。

ジャック・ドゥミ Jacques Demy

『シェルブールの雨傘』(1964年)、『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)など、フランス映画にミュージカルの歓びをもたらし、日本でも高い人気を誇る映画監督ジャック・ドゥミ(1931-1990)。
港町ナントに生まれ、ドキュメンタリーの助監督を経て長篇デビュー作『ローラ』(1961年)を発表した彼は、その分身ともいえる作曲家ミシェル・ルグランらとの共同作業を通じて、1988年の遺作『想い出のマルセイユ』まで世界の映画ファンを魅了してきました。
女優カトリーヌ・ドヌーヴを世界的なスターにしたドゥミは、またフランス各地の美しい都市を舞台にしてきた“ヌーヴェルヴァーグの地方作家”でもあり、その評価は近年ますます高まっています。