若松孝二 wakamatsu koji 

壁の中の秘事 Les Secrets derrière le mur

立ち並ぶ団地群。その冷たく硬いコンクリートに閉ざされた何百もの壁の中には、さまざまな欲望と恩讐が閉じ込められていた。
若妻ノブコは、学生時代ともに平和闘争を戦った同士ナガイと情事を重ねながら再び壁の外へと出る日を渇望していた。
広島で被爆しケロイド傷を持つナガイは、彼女にとって平和の象徴であり外の世界を唯一の確認できる存在だった。

犯された白衣 Violated Angels

嵐の夜、看護婦たちは寮の外にいた少年を呼び寄せ、看護婦同士のレズプレイを見せようとする。
最初は黙って見ていた少年だったが、突然激高し持っていた銃で看護婦を射殺した。
少年は看護婦たちを次々に陵辱・惨殺していくのだった…。

天使の恍惚 Ecstasy of the Angels

キャンドルライトが闇の中から湧き出た様に浮び、周囲の闇は深い拒絶を示している。
女歌手の唄声……。
人気のないナイトクラブで秘やかに祝杯があげられる。
革命軍「四季協会」の秋軍団が首都総攻撃を期し、米軍基地襲撃、武器奪取作戦を敢行するのだ。

胎児が密猟する時 THE EMBRYO HUNTS IN SECRET

豪雨の夜、男が女を部屋に連れ込んだ。
男は百貨店専務の丸木戸女は店員のユカ。
「妻にそっくりだ」と男はつぶやいていた。
体を重ねる二人。
男を求めるユカの言葉を聞いたとたん彼は豹変した。
「やはりこの女もブタだ。子供生むことを望み、俺に激しく拒絶され、そして家を出たあの女と同じだ」。
胎児のように背を丸め巨大な頭を持つその男は、女の精神と肉体を矯正するために一本のムチを手にしていた。

 千年の愉楽 The Millennial Rapture

年老いたオリュウノオバの脳裏に、この紀州の路地で生まれ、女たちに愉楽を与え、散っていった男たちの思い出が駆け巡る。
自らの美ぼうをのろうように生きた中本半蔵、生きることを強く望んだ田口三好、北の地でもがいた中本達男。
彼らの誕生から死までを、助産師をしていたオリュウノオバは見つめ続けていたのだった。