mellow fellow & ruru メロウ・フェロウ&ルル
「シーン」という言葉の解釈は人それぞれにあると思うし、それは肯定的な意味でも、否定的な意味でも用いられたりする。
メロウ·フェロウとルル。
彼らの音楽性はともにインディー·ポップあるいはドリーム·ポッフと呼ばれるジャンルのグローバルな「シーン」とダイレクトに接続するが、しかし彼らが活動するのはマニラの音楽「シーン」ではない。
いま音楽を作っているその「場所」との、彼らなりの距離の測り方について。
逆輸入が当たり前の世界で
「僕らの共通点としては、僕らの音楽が自分たちの国で話題になるよりまえに、すでに世界に届いているということだよ。Ruru (ルル)もMellow Fellow (メロウ·フェロウ)もフィリピン人なの?』ってよく驚かれるんだ。そういったことは、文化のおもしろい変化でもあるよね」
22歳のポロ·レイズは実家の自分の部屋のベッドに横になりながら、くだけた調子でそう話す。
彼が取り組むソロ·プロジェクト、メロウ·フェロウのローファイでメランコリックな”ベッドルーム·サウンドは、そのメインストリームとはほど遠いと思われていたここフィリピンの地から発信されている。
実際、彼の楽曲はすべていま僕らが取材している6畳ほどの小さな空間で作られ、SoundCloudやYouTubeを通じて世界中のインディーファンたちの耳へと届けら
れたことで、世界に認知されるようになった。
同じく、ゴロゴロするポロを横目にしながらベッドに腰掛けるルルもまた、2016年ごろから自作の楽曲をSoundCloudにアップし始め、昨年発表したE P『SLEEP』がネット上の口コミで話題を呼んでいる新世代シンガーの旗手の一人。
彼女は現在、デ·ラ·サール
大学セント·ベニルデ校で映像制作を専攻する学生でもある。
「僕が彼女を発見したんだ。ルルがアップしていた楽曲を聴いて、これは何か新しいものだと思ったんだよ。それに、同じローカルのアーティストだと知って驚いた。でも一番驚いたのは、なんと僕と彼女の両親は昔からのゴルフ仲間だったんだ!僕もルルも小さいころからゴルフをやっていたし、そういうこともあってすぐに仲良くなって これ、すべて去年起きたできごとなんだよ!」
これまでメロウ·のインディー·シーンに根ざして活動してこなかった。
地元でのライブの経験はほとんど皆無といってもいい。
しかし、2018年に入ってから少しずつそんな状況にも変化が見られる。
シンガポールを拠点にするインディー·バンド、SobsとSubsonic Eyeの東南アジア·ツ
アーのマニラ公演が3月に開催され、彼らは2組のパンドのレーベルから出演オファーを受けたのだ。
さらに8月、メロウ·フェロウはタイ·インディー·シーンで人気急上昇中のSSW、プム·ヴィップリットとともに一夜限りの香港公演を成功させる。
いずれも、同じアジア圏の他国のアーティストからのラブ·コール。
マニラでは珍しい現象だった。
「活動の幅は広がってると思う。僕はいままで自分から海外のアーティストに連絡して友だちになってきたし、その逆だってたくさんある。以前に一緒に曲を作ったClairoだってそうだよ。僕にとっては、SoundCloudの再生回数やライクが伸びることより、自分が大好きなアーティストや尊敬している人と面と向かって話せるようになることのほうが重要なんだ。そして、そのことが僕の音楽をよりいい方向に導いてくれていると思う」
同じようにルルも、メロウ·フェロウのそんな姿を目て、自分がマニラで生活しながらどう音楽と関わってけばいいかを模索している。
「私はマニラの音楽シーンにいる人たちのことをほしんど知らないから、たまにそういう場所に行くことると、すごく疎外されているような気持ちになるのも、それはいいことだと捉えることだってできると思う」
シーンと距離があるのはいいこと 彼女の言葉をより理解しようとするならば、やはりメロウ·フェロウの言葉が手掛かりになるかもしれない。
「マニラのシーンは友人関係ベースのコミュニティだ。それを悪く言うつもりはないけど、アーティストであるためには必ずしも団結する必要なんてないだろ?出身がどうだとか、自分が何人であるとか、そんなことはあまり関係ない。自分の音楽に関しては、
た音楽だけの問題だよ」
ポスト·インターネット世代によるベッドルーム・ポップが量産される2010年代後半において、それが「ベッドルームで生まれた音楽」のことを指すのか、それとも「ベッドルームで聴きたい音楽」のことを指すのか、あるいはその両者なのか、もはやその定義はほとんど意味を持たない。
ひとつたしかなのは、引きつづき、すべての「ベッドルーム」の扉は世界に直結している、ということだけ。
「Not from The Philippines]
メロウ·フェロウのSoundCloudのプロフィールには、そんな回りくどいジョークが書かれている。