江戸川乱歩 edogawa ranpo

陰獣 INJU

日本の作家、大江春泥を敬愛してやまないフランスの推理小説家アレックス(ブノワ・マジメル)は、大江の作品を非常に意識した新作を発表し、日本にプロモーションにやってくる。
もちろん大江にもできれば会いたいという思いを抱え来日するが、この大江という作家、世界的に有名であるのに、誰一人として姿を見たものはいないという。
変わり者を通り越して、病的な感じも否めない人物のようで、会える可能性はゼロに近い。
京都でプロモーションを続けるアレックスは、ある日、出版会社の接待でお茶屋へ行くことになる。
そこで流暢なフランス語を話す美しい芸妓・玉緒(源利華)に出会う。

江戸川乱歩 edogawa ranpo

江戸川乱歩 三島由紀夫 Edogawa ranpo And Yukio Mishima
美の享受と形成に最高の価値をおき、美の実現を人生の至上の目的となす。
時には、悪にも美を認め、既成道徳をも無視するときもあり、反俗的態度をも害さない。
美輪明宏が語る「三島由紀夫と江戸川乱歩との出会い」
明智小五郎が好きだったの。
それで『明智小五郎って、どんな人?』って訊いたの。
そうしたら『腕を切ったら、青い血が出てくるような人だよ』って言うのよ。
そうしたら『うわぁ』って言ったら、『分かるのかい?』って言うの。
それで『素敵じゃない。だって、ハンサムで知的で、腕を切ったら青い血が出てくるような人なんて』って言ったの。
そしたら江戸川乱歩先生は『君の腕を切ったら、どんな血が流れるんだい?』っておっしゃるの。
私は『はい、七色の血が出ます』って言ったの。
そうしたら、『面白い、じゃあ、本当に切ってみよう』って言って、包丁を持ってくるように仰るの」
あの人相でしょう…本当に切りかねないな、と思って。
お止めなさいまし。
切ったら七色の虹が出て、目が潰れてしまいますよって言ったの。
そうしたら『…キミ、一体いくつだい?』って訊かれるの。
『はい、16です』と申し上げたら、『16でこのセリフかい…』って。

D坂の殺人事件

昭和2年、東京市本郷区団子坂にある古本屋・粋古洞の女将・須永時子は、伝説の責め絵師・大江春泥の「不知火」の雁作作りを蕗屋清一郎という画家に依頼した。
蕗屋は、見事に「不知火」の雁作をふたつ拵えてみせるが、本物の「不知火」は燃やしてしまい、残ったふたつの雁作を時子に渡す。
そうとは知らず、絵の出来映えに満足した時子は、続けて春泥の「明烏」を拵えるよう、蕗屋に依頼する。
ところが、吉原の遊女を折檻する場を描いた「明烏」の雁作作りには、さすがの蕗屋も困難を強いられてしまう。
時子から送られたマユミをモデルに使うも、どうしてもうまく描けない。
そんなある日、彼はマユミの衣裳を着た自分の鏡に映る姿をモデルにすることで、「明烏」を完成させるのであった。