DILL eat,l ife. 八ヶ岳南麓レストラン
DILL eat,l life. 自然をモチーフにした編集ユニットnoyamaとしても活躍。
東京で料理教室を主宰後、 2013年に八ヶ岳南麓に移住。
玄米菜食の 循環型レストラン「DILL eat, life.」 をオープ ンさせた。
著書に 「山戸家の野菜ごはん」 などがある。
https://dilleatlife.com/
山戸ユカ
DILL eat,l ife.
身近にある 「食」から発信する自然環境。
何を食べるのか。
誰もが避けられない毎日の ことであるからこそ、 その選択は大きな意味を 持っているに違いない。
地球からの様々な声を聞き、それを食を通して伝えている。
生まれ育ったのは東京? 山戸 東京といっても吉祥寺です。 私が小さな頃は、畑もいっぱいあって、森も近くにあったから、多くの人がイメージとして持っている都会ではなかったんですけど。 田舎で暮らすっていうことに対しての憧れは持っていたのですか。 山戸 それもなかったですね。私が20代に入った頃に、両親が東京の家を売って八ヶ岳に引っ越したんですよ。 自然の豊かなところで暮らすということを、両親を通して知ることになって。 東京という都市を離れて、田舎で暮らそうと思ったきっかけは? 山戸 20代の頃にバックパッキングで世界放浪をしたいと思って、仕事を辞め て国内外を1年半くらいブラブラしていたんです。 海外には7カ月いてバックパッカーで。 国内はワーゲンバスに車中泊しながらグルグル巡っていた。 それで自由を知ってしまったんです (笑)。 旅を終えてからも、休みの日には海に行ったり、山に行ったりしていて。 仕事のため一に東京にいるみたいな生活をずっとしていたんですね。 大きなきっかけとなったのが東日本大震災。 何かあったときに水が手に入らないところに人が住んでいるっていうことに違和感を感じて。 そして八ヶ岳に引っ越してきて、 DILL eat, life. をオープンした。 山戸 母がいたということも理由のひとつなんですけど、田舎で暮らしたことがなかったから、東京に近いっていうことも大きかったですね。 場所としての可能性もすごく感じたし。 DILLはどんなレストランにした いと思ったのですか 。 山戸 自分たちの身体は食べたものでできているっていうことが大前提にあるんです。 これは私が料理人としてずっと考えていたこと。 自然豊かなところで、地産地消を心がけながら、できる限り持続可能な循環型レストランを目 指しています。 循環型レストランとして実践していることを教えてください。 山戸 生ゴミゼロのレストラン。 私の料理のベースになっているのが、マクロビオーティックの身土不ニ、一物全体、陰陽の三原則なんです。 皮まで食べられる野菜。 皮まで食べられるっていうことは無農薬の野菜。 生ゴミが出たとしても、コンボストにして堆肥を作って。 それを農家さんに返したり、うちの畑で使ったりしています。 自分たちで野菜も育てているんですね 山戸 野菜は今年からはじめたんです。 今までやらなかったのは、周りに小さな有機農家さんがいっぱいいるから。 地域の人同士で循環させるっていうことも大事だと思うから、 すべてを自分のなかで完結させるのではなくて、小さなコミュニティのなかで、みんなで協力しあいながらDILLというお店ができているほうがいいと思って。 コロナ禍によって、どんな変化が もたらされましたか。 山戸 個人の内面としてはものすごく変わった。 コロナによって、ある意味では強制的にお店を閉めることになった。 そのことによって、国からの救済措置もいろいろあったわけじゃないですか。 結果として、働かなきゃいけない、払わなきゃいけないっていうお金のストレスを解き放つことができたんですね。 出ていくお金が少なければ、入ってくるお金は少なくていいやって考えられたことで、すごく気が楽になって。 自由な時間もできた? 山戸 八ヶ岳に来てからの6年間は、精神的なリフレッシュがどうしても必要で、 お店の休みの日は外に出たくなっちゃっていたんです。 時間がたくさんできたことで、家のことに向き合えたんですね。 やりたかったことを集中的にやったら、 はじめて家っていいなって思えたのね。 せっかくこんなにいい場所に暮らしているんだから、ここでの暮らしをもっと楽しまないとなってすごこく考えるようになって。 今は、何を人に伝えていきたいと思っていますか。 山戸 わかりやすく言えば、身体にいい ものを食べましょうっていうことを言って きたんだけど、 もはやそれだけじゃダメなんだなっていうことを少しずつ感じていて。 環境問題に関してのメッセージを少し強めに発信していこうと思っています。 それを食で表現したりということ? 山戸 実は、インスタで環境おばさんっていうハッシュタグを付けて、いろいろなことを投稿しているんです。 竹の歯ブラシのこと、コンボストのこと、工業型の畜産に反対して食べる肉を減らしま しょうっていうこと…。 環境問題に対する視点って、コロナによって大きくなっているように感じます。 山戸 そうじゃなかったら困っちゃうしね(笑)。 10年後にどんな世界になっているのかってまったく想像できないじゃないですか。 極みと絶望の淵の両方を、私たちは見ている世代かもしれない。 たかだか80年しか生きていないのに、それってものすごく大きな意味があって、ものすごく大きな責任もある。 日本だけとか、どこか限定された地方だけとかではなく、コロナは世 界中の人が共通して考えるきっかけになりました。 山戸 みんなが立ち止まらなきゃいけな かったという。やっぱり世の中にゴミが溢 れ過ぎていて、ものが多過ぎる。 食べもの にしろ洋服にしろ、たくさんつくってたく さん捨てる社会を改めること。日本人は もったいない精神の国だったはずだから。