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お手本は憧れのフランス映画から

「フランスの女性がおしゃれに見えるのはなぜ?」この問いに対する答えは、フランスの映画にありました。
フランス映画のアイコンとして活躍した女優のファッションから、おしゃれのヒントを探ります。

60年代の映画に登場する ファッショニスタたちが一番のお手本 に

今、世界中のファッション情報はSNSで簡単に手に入るのが当たり前の時代です。
ところが、日本にバリモードが上陸し始めた60年代初期、パリのファッション事情は、コレクションを報じる文化出版局の『ハイファッシ』などを愛読するマニアか、一部の富裕層だけが知り得る情報でした。
その間口を広げたのは、欧米の映画でした。
60年代に洋画が輸入されるようになるど、好奇心旺盛な女性たちにとって海外の暮らしぶりを知るには映画がもっとも身近な媒体となりました。
流行のヘア&メイクは? 何色の服が トレンド? それらの答えはすべて映画のなかにあったのです。
とくにモードの都に住むパリジェンヌの日常着に注目が集まりました。
フランスで学生や労働者が民主化を求めて蜂起した1968年の五月革命は、オートクチュールのデザイナーを刺激しました。
イヴ・サンローランは 多くの女性の手に届くようにブレタポルテをスタート。
新しい女性像を表現 するカトリーヌ・ドヌーヴをメゾンの「ミューズ」に選び、モードを革新していきました。
おしゃれの楽しみ方には、2つの方法があります。
60年代の映画でそれを教えてくれたのが、カトリーヌ・ドヌ ーヴ とジェーン・バーキンでした。
いつもモードに触れ、それを着こなす感性を磨き、時代の先端を生きたモード派のドヌーヴ。
流行を意識せずに、独自のスタイルでおしゃれを楽しんだバーキン。
ゴージャスなムードの装い、スタイリッシュな着こなし、女優が 醸し出す雰囲気をなぞっていくうちに、少しずつおしゃれが身につき、楽しくなっていくのです。
海外ブランドの新作やファッショニスタに触れることで、私たちはモード の極意を学んできました。
世界中の情報がタイムラグなく伝わり、 おしゃれを楽しむ機会が多くなった今でも、60年代の映画に登場する女優たちのファッションは色褪せることなくお手本であり続けています。


フランス映画のファッションキーワード

デザイナー

デザイナーにとって女優はイマジネー ションの源、大切な「ミューズ」でもあ ります。
イヴ・サンローランにとって ドヌーヴは「ミューズ」以上の特別な存 在でした。
ジャンヌ・モローは恋人の ビエール・カルダンに主演映画の衣装を委ねました。
1953年コレクション を再開させたシャネルは、モダンなシ ャネル・スーツを発表し、欧米の女優 たちに愛されました。
とくにロミー・ シュナイダーは衣装ばかりか、ブライ ベートの顧客でもありました。

映画監督と女優

ルイス・ブニュエル監督は『昼顔」で、 カトリーヌ・ドヌーヴの美貌と複雑な 心理のアンバランスを、フランソワ 一・トリュフォー監督は「突然炎のご とく』でジャンヌ・モローの知的でクー ルな側面を引き出し、ジャン=リュッ ク・ゴダール監督は自我に目覚め奔放 に生きる新しい女性像を、のちに妻と なるアンナ・カリーナのなかに見出しました。
映画監督と女優は、時代を象 徴する女性像を模索して話題作を生み 出す関係にありました。

ヌーヴェルバーグ

ニューヨークではアンディ・ウォーホ ルやロイ・リキテンスタインによるキ ッチュな芸術のポップアート活動、ロ ンドンでは若者によるストリートカル チャーと、60年代は世界的なサブカ ルチャーブームの時代でした。
そうして、映画界に革命を起こしたのが、ジ ャン=リュック・ゴダール、フランソ ワ・トリュフォーなどヌーヴェルバー グの監督でした。
軽妙なストーリー展 開とスタイリッシュな映像で映画界に革命を起こしました。

ブランド

パリに存在する老舗ブランドのなかで も、エルメスは良質の素材と確かな職 人技を誇るメゾンです。エルメスの 「ケリー」 「バーキン」は、2人の女優 とバッグのイメージが結びつき、商品 名になりました。また、イヴ・サンロ ーランにシューズを提供していたロジ ェ・ヴィヴィエ。彼がデザインした四 角いバックルつきの「ベル・ヴィヴィエ」は、『昼顔」でカトリーヌ・ドヌーヴ がはき注目を集めました。今も色や素 材を変え新作が発表されています。

【代表作】「昼顔」1967年 (ルイス・ブニュエル)
【キーワード】ゴージャス/華やか/シック/ヒョウ柄
【出身】フランス

最先端ファッションの『昼顔』

映画「昼顔」の衣装には、当時のトップトレンドがちりばめられて いました。身頃にボタンが並んだミリタリー調のスーツやページ ュのチュニックとミニスカートのセットアップは、富裕層の貞淑 カートのセットアップは、 な妻のイメージを表現し、白い標とカフスのドレスは少女のよう なドヌーヴを見せてくれました。服のニュアンスを読み取れるこ とからおしゃれレッスンは始まります

フランスを代表する女優といえばカトリー ヌ・ドヌーヴ。その美貌と洗練された身のこな しは、歳を重ねてもなお女性のお手本といえま す。ドヌーヴは30年以上イヴ・サンローランの コレクションに招かれ、最前列に姿を見せていました。

映画「昼顔」と「暗くなるまでこの恋を」の衣装 をサンローランが担当し、プライベートでもサ ンローランの服をまとうドヌーヴは、誰よりも 彼のよき理解者でした。2002年のサンローラ ン引退コレクションのラストは、“永遠のミュ ーズ”ドヌーヴが長年の労をねぎらうようにサ ンローランに寄り添いランウェイを歩く姿が印 象的でした。ドヌーヴは、モードを熟知し、品 格と新しい女性のアティチュード(身のこな し)で美しく着こなす術を身につけ、女性に憧 れの念を抱かせました。1972年にはシャネル No.5のイメージキャラクターを務めています。

ロジェ・ヴィヴィエのパンプス

ミニスカートが流行するとパンプスのヒールは 低くなりました。それまではモードにはピンヒー ルが定番でした。シューズデザイナーのロジェ・ ヴィヴィエは、サンローランの初期のコレクショ ンから、四角いバックルがついたフラットのパ ンプスを提供。現在流行のラインストーンつき スニーカーでドレスアップする発想と同じです

ヒョウ柄の着こなし

難易度の高い野性的なヒョウ柄を上品でゴージャスに着こ なせるのはファッショニスタの証しといえます。そのヒョ ウ柄を上手に着こなせるのがドヌーヴでした。2019年76 歳で是枝裕和監督の「真実」に出演したときも、ヒョウ柄の コートをまとっていました。初心者は、ヒョウ柄のスカー フや透け感のある軽いプラウスで試してみましょう

ジェーン・バーキン

【代表作】「カトマンズの恋人」1969年(アンドレ・カイヤット)
【キーワード】 コケティッシュ/バーキン(バッグ)/かご/デニム/スニーカー
【出身】イギリス

どこにでも持って出かけたかごバッグ

セルジュ・ゲンズブールにプレゼントしてもらったかごバッグは、 ジェーンの大のお気に入りになりました。そうなるとカジュアル な装いにもドレスアップしたときも、季節や場所さえ選ばず持っ ていたといいます。ものが持つ意味や歴史さえ意に介せず、その かごバッグは壊れるまで使い続けられました

スレンダーな体にジーンズ、足元はスニーカーやラフなサンダル、Tシャツやコットンの襟 付きシャツ、オーバーサイズのニットと、誰の クローゼットにもありそうなアイテムを組み合 わせて、ヘアをかき上げる無造作な仕草をプラ スするとコケティッシュなジェーン・バーキン が完成します。誰にでも真似できそうな装いで すが、実は着る人のセンスを問われる一番難し いスタイルといえます。それらをサラッとやっ てのける、それがジェーン・バーキンの格好よさなのです。
また不要なものは持たず、クリエイティブに 暮らすことを追求する、これが独自のスタイル を持つということにつながっているのです。女優でありシンガー、父親が違う3人の娘の母親 でもあるジェーン・バーキンの自由な生き様は 唯一無二、その姿に世界中の女性たちは今も憧 れ続けています。

“バーキン”をカスタマイズ

パリーロンドン間の飛行機でエルメスのジャン・ルイ・デュ マ社長と隣り合った席に座ったジェーン・バーキン、かごバ ッグの中身をこぼしてしまった姿を見たデュマ社長が、なん でも入り持ち運びやすい「バーキン」を自らデザインして贈り ました。持ち前の独創的な発想で「バーキン」に惜し気もなく シールを貼ったり、お気に入りのチャームをいくつも下げた りしてカスタマイズし、自分流のバッグに仕上げました

カジュアルファッションのお手本

デニムやスニーカーはサイズさえクリアすれば、歳を重ね体 型に変化があっても、楽しめるもっともポピュラーなアイテ ムです。きらびやかなドレスも、女性を美しく輝かせるジュ エリーも身につけることなく、バーキンは誰よりも輝いてい ました。それは本来の自分であり続けたからです

ジャンヌ・モロー

【代表作】「突然炎のごとく」1962年(トリュフォー) 【キーワード】クール/枠/奔放な女性像
【出身】フランス

大胆なショッキングピンク

ポップで強い色を好んだカルダンの影響で、鮮やかなショッキングピ ンクを着こなすセンスを培ったモロー、無難な色を選びがちのところ、 尻込みしそうな強い色を着てみると意外な発見があるものです。大胆 な色遊びは、おしゃれ上級者のテクニックには欠かせません

大きな瞳とくちびるが印象的なジャンヌ・モローは、決して 美人とはいえない強い顔の印象の持ち主でした。その顔で、奔 放に生きる女性を演じると独特の美しさを醸し出すのです。ジ ャック・ドゥミ監督による『天使の入江』(1963年)で主演を務め たモローの衣装担当に、シャネルは新進気鋭のデザイナー、ビ エール・カルダンを紹介しました。二人は出会った瞬間に恋に 落ちたといいます。カルダンはモローを「知性そのもの」と称賛 し、シンプルでクールな装いを提供しました。

黒い服も妖艶に

かつて喪服の色として忌み嫌われていた黒 は「女性をもっとも美しく見せる色」とい うシャネルの一言で、色の印象が覆りまし た。以来、フランスの女性は日常着に黒を好 んで着るようになりました。モローは、サス ペンス映画「死刑台のエレベーター」 (1958) 年)で、その黒を妖艶に着こなしました

アンナ・カリーナ

【代表作】「気狂いピエロ」1965年(ゴダール)
【キーワード】 イノセント/フレンチ・シック
【出身】 デンマーク

アンナ・カリーナは、17歳のときモデルとし てシャネルと出会ったとき、その名前をつけて もらいました。その後、ジャン=リュック・ゴ ダールと結婚するといくつもの映画に出演し、 共同で制作会社を設立しますが4年で離婚し、 その後4度結婚しました。危うさとイノセント さをあわせ持つアンナは、ヌーヴェルヴァーグ のアイコンとなりました。セルジュ・ゲンズブ ールの感性をも刺激し、楽曲を提供されていま す。鬼才に愛された女性といえるでしょう。

無垢なイメージの白ブラウス

ナボコフの「ロリータ」を彷彿とさせるレースで縁取られ た白いブラウスがよく似合うアンナは、学生風のコート やワンピースなど無垢なスタイルの服を着こなすセンス の持ち主でした。また下町に住む女性が着そうな服を女 優の嗅覚でチョイスする能力は抜群でした。

Anna Karina アンナ・カリーナ Blouse

アヌーク・エーメ

【代表作】「男と女:1966年(クロード・ルルーシュ)
【キーワード】シンプル・スタイル/スマート/ムートンのコート
【出身】フランス

クロード・ルルーシュ監督の『男と女」は、 1966年に日本公開されると話題になりまし た。モードの都パリに生まれ、子どもの頃か ら日常に潜むエレガンスを身につけていたア ヌーク・エーメは、たちまち人気を博しまし た。普段着を素敵に着こなすエーメに、おし ゃれ好きの日本の女性は大いに刺激を受けた ようです。この映画は20年後に「男と女II』、 53年後に「男と女 人生最良の日々」に同じキ ャストでその後の人生が描かれました。

コートの着こなし

日常着をさりげなく小粋に着こなすアヌーク・エーメ のおしゃれ法でもっともヒントになったのが、コート の着こなしです。海辺で着ていたファーのトリミング のマダム風コートや、街中でムートンコートの襟を立 て寒そうに身をすくめて歩く姿が印象的でした

Anouk Aimée アヌークエーメ

ロミー・シュナイダー

【代表作】「太陽が知っている」 1969年(ジャック・ドレー)
【キーワード】シック/スカーフ
【出身】オーストリア

オーストリア出身のロミー・シュナイダーは、2回のセザール賞を受賞しフラ ンスを代表する女優として認められています。1958年、20歳で射止めた主演作 『恋ひとすじ』で共演したアラン・ドロンと恋に落ち婚約しましたが、まもなく 離別。1969年「太陽が知っている』で再びドロンと共演しました。サントロペを 舞台にヴァカンスを優雅に楽しむシーンでは、”金持ち日焼け” を意味する「リッチ・ブラウン」に日焼けしたロミーが映し出さ れています。当時、小麦色に焼けた肌はおしゃれの一部でした。

シャネルを愛用

ヴィスコンティ監督のオムニバス映画 「ポッカチオ 70」でロミーは何着もの シャネル・スーツを着こなしています。 この映画のためにシャネルは、スー ツの着こなし、アクセサリーの使い 方、身のこなしまでロミーに伝授した といいます。ロミーはブライベート でも好んでシャネルを着ていました

スカーフを使いこなす

美しく聡明なおでこの持ち主口ミー は、自分のアピールポイントをよく 知ってのことかおでこを強調してス カーフを頭に巻いているシーンをよ く見かけました、スカーフの使い方は、 首に巻いたり頭に巻いたり、装いの アクセントにするだけでなく、パッ グに結んで楽しむ方法もあります

ロミー・シュナイダー romy_schneider