美容師ブログ 第3章 鶴丸先生に師事し新宿マスターズサロン(日本で初めてのプロの美容師育成機関)に転勤②。
2023年現在、高円寺でオーナー美容師をしています。
東京の窪田理美容専門学校を卒業し、インターン(今はこの制度はありません)から美容師を約30年近くしています。
これから、僕の美容室が気になって来店するお客様のための動機の一つの「どんな美容師さんなんだろう?」という経歴、人柄を来店前に理解してもらうという事と自分の歴史の一つに「プロフェッショナルの美容師育成のスクールの先生時代」があるため、美容師を目指す人の参考になればという思いがあり、書き進めようと思います。
何故、美容師の講習が必要とされるのでしょうか?
サービス業の難しさ
お客様にとって、良いサービスとはどのようなものでしょうか?
全てのサービスはお客様個人にとっての満足範囲内か範囲外かで決まります。
値段・サービス内容・時間などが要因です。
よく、美容室でスタッフだった頃、「お客様の半歩先を行きなさい」と言われました。
何故、一歩では良くないのか?
スタッフは良いと思うものを提供しようとしますが、お客様個人の立場で提供されたサービスが良いと思うか、悪いと思うかはお客様自身が判断します。
お客様の一歩先とはどんなに良いものでも、サービス内容や価格帯が満足される範囲内でなければ用意サービスとは思われないからです。
よって”半歩先”という表現をしています。
ここが、ファッションや飲食などサービス業の難しくも面白い所です。
美容室によるサービスと価格の違いの原因とは!?
美容室によって料金の違いが見受けられます。
カット料金が2000円や5000円、7000円だったりします。
例えば、コンビニエンスストアで250㎖130円の飲料水があるとします。
同じ商品が、格安店で80円で売っていたりします。
又、高級のホテルでは自室の冷蔵庫で300円で提供されたりします。
これは、それぞれにニーズの違いが価格に反映されています。
コンビニエンスストアでは、24時間購入できて温度管理もされています。
格安店では常温だったり、お店側も高品質のサービスというよりは、少数人数で効率的に営業しています。
ホテルでは高水準のサービスで付加価値を提供して満足度を高めています。
ここで、美容室の料金差がある理由はこの原理で決定されていると思います。
美容師さん側からみる技術力はどのサービス価格帯で働きたいかをイメージできることが大切です。
質の高いサービスや技術を提供する美容室は競争が多い為、多くの習得する技術を求められ、給与も低めに設定されている所が多いと思います。(需要と供給バランス)
目指すべき美容師のビジョン
僕が考える最高の美容師とはお客様の身長や雰囲気、着ている服装、職業に対するヘアスタイルの限界値の理解(公務員の方やスチュワーデスさん、ミュージシャンやフリーランスの職業に対する理解)、時代性を反映させ、素材に対する熟知(髪が柔らかい、硬い、クセ毛、直毛、ダメージレベルなど)して、ヘアスタイルをイメージしてそれに対して実現できる、多くのテクニックを持っている美容師さんです。
それに対して、リーズナブルなサービスとは使う材料(原価)、人件費を抑え商品のバリエーションをシステム的に運用することです。
美容業界では、年齢、髪質、などを個人の技量に任せて、今はやっているショートはこの髪型、ミディアム、ロングとパターンで技術を憶え短時間の回転率でサービスを提供する美容室です。
スタッフは時間効率を求められ、パターン化されたヘアスタイルを量産化していきます。
需要と供給で全てのサービスは成り立つのでお客様の求めるものを提供することは同じです。
よって、スタッフの技量、知識も違いが出てくるのです。
より高いサービスを提供する美容室では、毎日の練習が必要とされ、リスクを背負って新しい価値を作る喜びを感じられる人が向いていると思います。
しかし、人によってベーシックなラインを好み、最先端のものを必用としない人もいます。
食べることや着る服、サービスなど人によって求めるレベルは多種多様です。
選択できることが大切だと思っています。
僕が都内で数店舗見てきた美容師さんたちは、同じ美容室でも当然ですが個性が違います。
職人気質な人、感性豊かな人、職業に対する考え方も人それぞれ。
僕はパターン化して、多くのお客様に提供していくスタイルではなく、お客様一人一人に向き合いデザインしていくヘアスタイルの理解を深めたいと思いました。
そこで、カットスクールの先生という職業の時間を経験したいと思ってマスターズサロンで働くことを決めました。。
萩原宗プロフェッショナル(マスターズサロン)養成所
僕がこの機関に配属になったのは、豪徳寺店を経て1995,6年ごろだったと思います。
どのようなシステムだったかを紹介します。
まずは受講生は美容師免許を持っている人です。
(美容師国家免許を取得目的とするのが美容師専門学校ですが、このスクールはプロの美容師の技術習得を深める機関です。)
中には稀に父親や母親が美容師で高校生の頃から土曜日など週一日などで受ける人もいました。
平日9時から17時まで、12時から13時までお昼休憩、日曜日休みという美容室とは全く違う形態です。
普通、美容室は10時や12時スタートでお昼休みは個人で空いた時間で取り、20時や22時までという営業スタイルが多いと思います。
当時、90年代でテクニカル1,2~10というクラス分けで、クラスごとに受講料を払うシステムで、1日換算で8000円くらいだったと思います。
テクニカル1はウイッグを使い鋏の持ち方から、ブロッキング、理論、実技、10日間をベースに補講が用意されています。
テクニカル2からは課題ごとにお客様に入客してもらい、講師がチェックし補足が必要であればウイッグで確認して行く授業になっています。
給与をもらって、技術を教えてもらう事をありがたいと思いなさいという時代
まず、不思議に思う人がいると思いますが何故!?美容師さんがお金を払って外部講習に行って技術を習得するかという事ではないでしょうか!?。
日本では技術は美容師さんは美容室、料理屋さんは料理店で勤め給与を受けながら専門知識や技術を教わるという研修生的な伝統があったと思います。
しかし、この制度の根本には徒弟制度(住み込みで師匠の下で下済みをする)・終身雇用という同じ会社や美容室などに長い時間勤めるという条件で成り立っていました。
近代、1990年代以降は転職をすることによって、給与を増やしスキルを磨いていくという流動性が生まれました。
そうすると、会社や組織が新人を育てることに(投資する)メリットがなくなってきます。
いつか辞めてしまうスタッフに投資する意味がないと考えてきました。
技術習得の難しさは、営業時間外に技術の習得のために教える側の先輩スタッフ、教わる側の後輩スタッフが双方共に残業という形になります。
お店側にすると残業代の賃金を支払うとコストの負担になってしまいます。
又、お店側にカリキュラムが揃っている必要性があります。
以外!?と考えてしまう人も多いでしょうが、すべての美容室が最先端の技術や知識があるのではなく、練習会すらない美容室や先輩が後輩に積極的に教える環境にない美容室も多く存在します。
(病院でも得意な分野や技術に格差があるのと似ています)
美容師さんはお店に技術習得のカリキュラムが不足していると判断した時、個人の負担で休日を利用して講習を受けます。
知り合いの美容師さんの中には務める美容室には年配の方やリーズナブルなお客様が多い為、若いファッションの好きなお客様の層が来店されないと言いました。
だから、動画でお金を払って勉強したり講習に行かなければならないと言っていました。
自分が将来、どんな美容師になりたいかという事をイメージしてから働く美容室を決めないと、アシスタント時代に習得しなければならない技術も変わってしまう事になり遠回りの道になってしまいます。
日本にパーマ屋さんからカット&ブローの時代を大きく変えた美容室がありましたが、70年代にイギリスに渡り日本に高いカット技術で時代をつくった「ピーカーブー」という美容室があります。
川島文夫さんはヴィダルサッスーンアートディレクターとして活躍し、東京青山を中心に多くの優れた美容師さんを排出し続けています。
また、2000年代に伝統的な技術中心の職人型美容師さんに、ファッションの要素を多く取り入れ新しいデザインを原宿で展開した「アクア」という美容室があります。
その遺伝子がシザーズリーグで2023年対決した動画を紹介します。