ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
都会のアリス Alice in den Städten
アメリカ東海岸の遊歩道。海辺でポラロイド・カメラで風景を撮り続けながらさすらっているフィリップ・ヴィンターは、ドイツの出版社と約束している旅行記のストーリーが書けないまま1ヵ月が過ぎていることを気にかけていた。
航空会社の入口の回転ドアでフィリップは不思議な少女と出会った。
9歳の少女アリスは、母親のリザに連れられてドイツに帰ろうとしている所だったが、全便欠航になり翌日までアリスを預かってくれとリザから頼まれるフィリップ。
まわり道 Falsche Bewegung
ウィルヘルムは、不安とあこがれにいざなわれて旅に出る。
作家になりたいという希望を持っている彼。
途中で彼は、旅芸人の老人と少女や放浪詩人達と知り合う。
中には女優のテレーサもいた。
さまざまなことを語り合う彼ら。
ウィルヘルムはテレーサを愛するようになる。
だが、やがていつしか彼らは再びバラバラに散っていく。
放浪詩人は自ら別れを告げ、ウィルヘルムと老人はいさかいをし、少女とテレーサは共に旅立っていく。
そして、1人になったウィルヘルムは小説を書き始めるのだった。
さすらい Im Lauf der Zeit
ブルーノは大型ワゴンに乗り、町から町へと映画館のフィルム運びや映写機調整の仕事をしている。
ワゴンは彼の住居だ。ミュージックテープを鳴らして、のどかな日々を送っていた彼は、ある日、ロベルトという男と出会った。
彼は離婚したばかりで、空のトランク片手に旅をしている。
ロベルトはブルーノのワゴンが気に入った。
そして、2人の旅が新たに始まる--。
都市とモードのビデオノート Aufzeichnungen zu Kleidern und Städten
世界的なファッション・デザイナーに関する映画を、世界的な映画作家に委嘱するというパリのポンピドゥー文化センターによる企画をもとに作られた、「夢の涯てまでも」のヴィム・ヴェンダース監督・脚本・ナレーションによるシネ・エッセー。
選ばれたファッション・デザイナーは“黒の巨匠”として知られる山本耀司で、東京とパリ、モードと映画のアイデンティティをテーマに、ヴェンダースの質問に対して山本耀司が答えるという形で進んでいく。
パリ、テキサス Paris, Texas
テキサスの原野。
一人の男が思いつめたように歩いている。
彼はガソリン・スタンドに入り、水を飲むと、そのまま倒れた。
病院にかつぎこまれた彼は、身分証明もなく、医者は一枚の名刺から男の弟ウォルトに電話することができた。
男はトラヴィスといい、4年前に失踪したままになっていたのだ。
病院から逃げ出したトラヴィスをウォルトが追うが、トラヴィスは記憶を喪失している様子だった。
時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース! Faraway, So Close! / In weiter Ferne, so nah!
友人のダミエルが人間になり、ひとり取り残された天使カシエルは悲しい気分で勝利の天使のモニュメントに座って時のない永遠の流れに身を任せながら人間たちを観察していた。
ベルリンの壁は崩壊して、時代は狂ってしまった今、カシエルはミハイル・ゴルバチョフの肩越しに彼の考えを盗み見る。
彼は人間になることを願っていた。
彼のガールフレンドの天使ラファエルは二人の間の信頼関係が弱まっているのを感じる。
リスボン物語 Lisbon Story
映画の録音技師ヴィンターのもとにリスボンにいる監督モンローから助けを求める絵葉書が届く。
ヴィンターは骨折した足も省みずリスボンに急行する。
だが葉書に書かれた住所の家にモンローの姿はなかった。
ある晩、モンローが旧式の手回しカメラで撮影したリスボンのフィルムを見るヴィンターの耳に、美しい音楽が聞こえてきた。
家の一室でマドレデウスの面々がリハーサルをしていたのだ。
ここは彼らの家で、彼らはモンローの映画のために音楽を作っているのだという。
愛のめぐりあい Al di là delle nuvole
雲のなかを飛行機で旅する映画監督の私。
作品を完成した疲労の中から、次の映画のアイディアが生まれる。霧の立ち込めるフェラーラの街へ。
<第1話 フェラーラ、ありえない恋の物語>
<第2話 ポルトフィーノ、女と犯罪>
<第3話 パリ、私を探さないで>
<第4話 エクス・アン・プロヴァンス、死んだ瞬間(この泥の肉体)>
ベルリンのリュミエール Die Gebrueder Skladanowsky
マイク・マックスはバイオレンス映画で知られる敏腕プロデューサー。
美しい海に面したマリブの豪邸からパソコンで秘書に指示を送って仕事をしている。
彼の手がける「シーズ・オブ・バイオレンス」という映画の爆破シーンの撮影で、女性スタントのキャットが頬に傷を負い入院する。
マイクは彼女を病院に見舞うが、その真意は訴訟を起こされることを恐れたためで、彼女にもそれは見すかされていた。
ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ Buena Vista Social Club
感動的なカーネギーホールでのコンサートやレコーディング風景などで見せる、キューバ音楽の古老たちの表情が魅力的。
心から音楽を楽しんでいる姿が印象に残ります。
ミリオンダラー・ホテル The Million Dollar Hotel
2001年、ロサンゼルス。
社会からはじき出された人々が住みつくミリオンダラー・ホテルで、ちょっとオツムの弱いトムトムは住人たちの雑用をこなして暮らしている。
そんな彼の気掛かりは、ホテルに住む美しい娼婦エロイーズ。
ある日、エロイーズがトムトムに声をかけてくる。
が、それは親友イジーがホテルの屋上から転落死したからだった。
さらに、イジーがメディア王の御曹司だったことで、その父親に捜査を依頼されたFBI捜査官スキナーがホテルに乗り込んできた。
ソウル・オブ・マン The Soul of a Man
ボイジャーが宇宙に運んだ曲を生み出したブラインド・ウィリー・ジョンソン、クリーム時代にエリック・クラプトンがカヴァーしてヒットを飛ばしたスキップ・ジェイムス、シマウマ柄のジャケットを着てハイトーンの歌声を響かせるJ.B.ルノアー。
時代も場所も異なる三人のブルースマン。
彼らの知られざる人生を、その魂を受け継ぐ現代のミュージシャンたちによるカヴァー演奏に乗せて深く掘り下げていく。
ランド・オブ・プレンティ Land of Plenty
ロサンジェルスの街の大通りに、古びたヴァンが停まっている。
そのヴァンは改造され、天井から監視カメラが街並みを覗いている。
監視用機材が所狭しと置かれた車内、短くなったタバコをふかしながら、男がモニターを覗いている。
荒んだ街の様子を映し出している画面を見ながら、男は呟く。
「あの攻撃からまだ2年と1日、警戒レベルは依然高いが、人々の危機意識は後退している」。
アメリカ、家族のいる風景 Don’t Come Knocking
かつては西部劇のスター俳優だったのに今では落ちぶれたハワード・スペンスは、新作の撮影現場から逃げ出し、久々に故郷を訪れます。
そこで30年ぶりに再会した母から、20数年前に彼の子供を身篭もっている女性から連絡があったという驚きの事実を聞かされます。
ハワードはそれを確かめるため、自分の俳優デビュー作の撮影地でもあるモンタナ州ビュートへ向かいます。
彼は撮影中に関係を持った地元のウェイトレス、ドリーンを訪ねます。
パレルモ・シューティング Palermo Shooting
フィンはアート写真からモード写真まで手がける世界的写真家。
彼の写真はデジタル処理を駆使して、“現実”を組み替えることでまったく新しい世界を作り出します。
活動拠点のデュッセルドルフでは、常に人に注目される生活。
どこへ行くにも携帯電話が手放せず、イヤホンから聴こえる音楽だけが唯一心を落ち着かせる存在でした。
ほとんど眠ることができない彼は、いつも“死”にまつわる短い夢の始まりで目を覚まします。
あるとき、車を運転しながら風景を撮影していると、偶然ある男の姿を写真に収めてしまいました。
それと同時に、車はコントロールを失い、危うく大事故を引き起こしそうになります。
フラフラと車から抜け出し、立ち寄ったパブで彼を待っていたのは、さらに不思議な体験でした。
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち Pina
バレエと演劇の垣根を取り払い、境界線を自由に行き来し、そのどちらでもない全く新しいジャンルを生み出したピナ・バウシュ。
伝統や常識と決別した彼女は、ダンスという身体の言葉で、強さと儚さ、歓びと悲しみ、愛されたいという願いと不安など、誰もが共鳴できる揺れる感情を表現します。
だが、高松宮殿下記念世界文化賞、京都賞、ゲーテ賞などの栄えある賞を受賞、輝かしい道を歩み続けたピナが、2009年6月突然この世を去ってしまいます。
20年来の友人であるヴィム・ヴェンダース監督は、ピナと映画の企画を進めていたが撮影中止を決定。
しかし、彼の背中を押したのは、世界中から届く映画化を願う声でした。
ヴェンダースは空間の広がりを可能にする3Dがあれば、ピナとヴッパタール舞踊団の世界を再現できると確信します。
ヴィム・ヴェンダース Wim Wenders
見えないが、いるな?
ずっと感じてる。
君の顔が見たい。
こっちがどんなにいいか、教えてやりたい。
冷たいものに触る。
いい気持ちだよ。
煙草を吸う。
コーヒーを飲む。
一緒にやれたら、言う事なしだ。
絵を描くのもいい。
鉛筆を持ち、太い線を引く(やってみせる)。
それから細い線、二本でいい感じの線になる。
手がかじかんだら、こすり合わせる(やってみせる)。
これが、またいい気持ちだ!
素敵な事が山ほどある。
でも君はいない。
僕はいる。
こっちに来たらいいのに。
話ができたらいいのに。
友達だからさ(手を差しだす)。
カンパニエロ!
「ベルリン天使の詩」より