ルイス・ブニュエル Luis Bunuel
熱狂はエル・パオに達す(1959) LA FIEVRE MONTE A EL PAO
ビリディアナ(1960) VIRIDIANA
学費を出してくれた伯父ハイメから、訪問の依頼をうけたビリディアナは、渋々旅立った。
ハイメは妻と瓜二つに成長したビリディアナにすっかり魅せられ、修道女になるという彼女を無理にひきとめるため、睡眠薬を呑まして眠らせ犯してしまった、と嘘を言った。
だが、ビリディアナは、それでも屋敷を出た。
そして数時間後、伯父の自殺を知った。
その死の原因が自分にあると考えた彼女は、その深い罪の意識に、修道院に帰ることを断念し、他人に慈悲を与えて罪の償いを決意した。
若い娘(1960) LA JOVEN
皆殺しの天使(1962) EL ANGEL EXTERMINADOR
オペラ公演が終って、夜食をとるために20人余の上流紳士淑女が、豪荘なノビレ邸に集まって来た。
主人エドゥムンド・ノビレとその妻ルシア、彼女の愛人らしき大佐、ピアニストのブランカ建築枝師、歌手、医者のコンデ、そしてワルキューレと呼ばれる処女レチチアなど。
しかし、彼らが邸に到着する以前から、ノビレ邸ではちよっとして異変がおこっていた。
十数名もの召使いたちが、夜食会を前に次々に邸を去っていったのだ。
食事を終え、人々がサロンに移り、ブランカが弾くパラディージのソナタを聴きながら、噂話に花を咲かせ、帰る時刻が近づいた。
小間使の日記(1963) LE JOURNAL D’UNE FEMME DE CHAMBRE
セレスチーヌはパリで侯爵夫人邸の小間使いをしていたが、都会が嫌になり田舎町のモンテイユウ家に奉公した。
そこは家つき娘の夫人が実権を握り、夫は狩猟と女漁りの好きな田舎紳士、夫人の父親も婦人靴を異常に愛する癖があり、下男のジョゼフも変った性格の持ち主だった。
セレスチーヌは老人の身の廻りの世話をすることになったが、早くもモンテイユウ氏が淫らな目を向けはじめ、老人も夜毎彼女に靴をはかせて楽しんでいた。
隣家には退役大尉、モージェ氏が住んでいたが、両家の仲は大変悪い。
ある日老人が急死、その日から近くに住む少女が行方不明になった。
砂漠のシモン(1965) SIMON DEL DESIERTO
昼顔(1967) BELLE DE JOUR
セブリーヌとピエールの二人は、仲の良い幸せそのものの若夫婦だ。
二人はお互に心から愛しあっていた。
セブリーヌもよく夫に仕え、満足な毎日を送っているのだが、彼女が八つの時、野卑な鉛管工に抱きすくめられた異常な感覚が、潜在意識となって妖しい妄想にかられてゆくことがあった。
情欲の鬼と化したピエールがセブリーヌを縛りあげ、ムチで責めさいなんだ挙句、犯したり、卑しい男に強姦されるという妄想であった。
セブリーヌの奥底に奇妙な亀裂が生まれていることを、ピエールの友人アンリだけは、見抜いていた。
アンリはなぜか、いつもねばっこい目でセブリーヌをみつめているのだった。
セブリーヌはそんなアンリが嫌いだった。
銀河(1968) LA VOIE LACTEE
現代のパリ。ハイウェイを二人の浮浪者、ピエールとジャンがヒッチハイクで車を止めようとしている。
ピエールは60歳ぐらい、ジャンはちょうどその半分ぐらいの年齢だ。
うさん臭い二人の前では止まる車もない。
しばらく歩いていると、突如黒マントの男が現われ、続いてキリストの聖痕を持つ無言の少年が現われ、少年が手を上げると車が止まった。
哀しみのトリスターナ(1970) TRISTANA
幼ない時に父を失い、十六歳の時、母が死んだトリスターナは、母の知人ドン・ロペに引き取られた。
ドン・ロペは貴族であり、職業を持たず、先祖から伝わる土地や財産で食べていた。
人間で一番幸福なのは働かない事だと彼は言う。
しかし、一九二〇年代終りのこの頃では、そういった生活は苦しいものだった。
邸にはサトゥルナという女中が居て、トリスターナは、ロペの簡単な身のまわりをすれば良かった。
或る日、サトゥルナの息子達と遊ぶうちに教会の鐘楼に登った彼女は、鐘をつかせて貰った。その夜、トリスターナは無気味な夢を見る。
鐘にぶら下がってカッと眼をひらいたドン・ロペの生首だった。
ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972) LE CHARME DISCRET DE LA BOURGEOISIE
ここはパリにあるラテン・アメリカの新興国ミランダ共和国大使館の一室である。
大使を囲んでセネシャルとテブノの三人が何やら密談をしている。
やがて、大使がバッグからいわくあり気に取り出したのは麻薬のコカインだった。
三人はニンマリとほくそ笑んで各自の分け前を手にして去った。
その夜、セネシャル家の晩餐に招ばれていた大使とテブノ、テブノ夫人、そして独身でアル中の女フロランスは連れ立って出かけたが、主人のセネシャル夫人は「約束は明晩です」といって怪訝な顔をした。
仕方なく一同は行きつけのレストランに足を運んだが、そこでは今朝死んだという店の主人の通夜が行なわれていた。