大島渚 nagisa oshima
無理心中 日本の夏 Night of the Killer
男を求めないではいられない十八歳のネジ子は、ある町でオトコを拾い、海岸に誘ったが、彼はしきりに死にたがり、ネジ子の裸に無関心だった。
そこへ数人のやくざが現われ、砂の中から鉄砲や刀を掘り出した。
その一部始終を見ていたネジ子とオトコは彼らに捕えられ、廃屋の一室に監禁されてしまった。
この廃屋はやくざがデイリの時に使う集合場所だった。
ネジ子とオトコの部屋には一人のやくざを刺し殺した鬼と名乗る男と、ライフル銃を盗みに侵入してやくざたちの兄貴分おにいきんに捕った少年がいた。
二人はしきりに人殺しの衝動に駆られていた。
白昼の通り魔 Violence at High Noon
草深い信州の農村。
ある夏、川の氾濫で畑を駄目にした篠崎の娘シノはホップの栽培とニジマスの養殖を計画しその資金を彼女に気のある村長の息子源治から借りたが、その代償に彼女は彼に身をまかせた。
シノに惚れていた小山田英助は現場を見つけて、村中に言いふらしたが、彼女は平気だった。
彼女は仕事が波に乗った一年後、村会議員に当選した源治に心中をせまられた。
彼はシノの気持をためしたかったのだ。
彼女はその時ふとその気になって彼に従った。
忍者武芸帳 Tales of the Ninja
この物語は織田信長の天下統一と共に発展していく。
時は室町幕府十三代将軍足利義輝の治世、各地に群雄割拠、戦いに明けくれる永禄三年、奥州出羽の最上伏影城城主結城光春は家老坂上主膳の謀略のため非業の最期をとげ、光春の一子重太郎は辛うじて逃げのびた。
数年後父の恨みを晴らそうとして主膳をねらう重太郎の姿が城下にみられた。
しかし主膳の妹の忍者、螢火によって重太郎は重傷を負わせられたが、伏影城に恨みを抱く影丸と名のる黒装束の忍者に救われた。
とき、折りから大飢饉が各地を襲い、その上重税にあえぐ百姓たちの怒りは頂点に達していた。
謎の人物影丸はこの状況を利用して、重太郎を擁し不満野武士と百姓たちを巧みに操り、伏影城陥落に成功した。
だがもう一歩のところまで主膳を追いつめた重太郎の前に螢火が再び現われ、彼は父の仇をうちそこねた。
日本春歌考 Sing A Song of Sex
豊秋は広井や丸山たちと共に大学受験のため上京してきた地方の高校生である。
彼は試験場でベトナム戦争反対の署名をする女に引かれ近づく。
女は豊秋の視線を感じ“藤原×××”と署名し立ち去る。
試験の終った後、街へ出た豊秋たちはなんとなく建国記念日反対のデモに加わったがそこで、かつて彼らの教師で、いま大学のドクターコースに学んでいる大竹と彼の恋人高子を認めた。
豊秋たちは高子を見ていっそう性欲を刺激され跡をつけるが、それに気づいた高子に用件を聞かれるとただ逃げ去るしか無かった。
日本の夜と霧 Night and Fog in Japan
霧の深い夜、新安保闘争で結ばれた野沢晴明と原田玲子の結婚式が行われた。
野沢はかつて破防法時代には学生運動の指導をし、今は新聞記者をしている。
六・一五の夜、野沢は傷ついた玲子と北見を介抱する後輩の太田に会った。
北見は十八日夜、国会に向ったまま消息を絶った。
式場には仲人の宇田川夫妻、破防法では共に火焔ビン闘争に参加した友人の中山・美佐子夫妻らが出席した。
太田は同志である北見の失踪をよそに、幸せな生活に入ろうとする玲子をなじった。
太田には六・一五の逮捕状が出ていた。
ハンガリー民謡を歌う色眼鏡の青年が入って来た時、式場からは結婚の幸せな空気は消えた。
闖入した青年宅見は一同に、十年前--学生たちが火焔ビンで破防法と闘っていた頃のある霧の深い夜、中山たちの学生寮に若い男が忍びこんでいたのを捕った。