ジャン=リュック・ゴダール Jean-Luc Godard
ゴダールの映画史 Histoire(s) du cinéma 1998
本作は作者のゴダール自身のモノローグによって語り継がれていくドキュメンタリーであるが、その主題となる、“映画史”はゴダールにしかできないようなやり方で解釈され寸断されている。
サイレント時代からの世界の映画の断片がのべつ幕なしに引用され、その画面を覆うようにさまざまな言葉の切れ端やアフォリズムが大きなテロップで浮かび上がる。
登場する映画作品の選定と順序は彼の独断によってなされており、国籍や製作年代は無効になる。
葉巻をくわえ、書斎の書棚に寄り掛かって本を手に取るゴダール。
映画や文学のタイトルを呟きながら電子タイプライターを叩きつづけるゴダール。
ゴダールのリア王 King Lear 1987
冒頭、作家のノーマン・メイラー父娘が出てきて、彼らがリア王とクローディアに扮するのかと思いきやすぐに消えて、それはそのままB・メレディスとM・リングウォルドに受け継がれる。
彼らはかのシェークスピアの古典悲劇の、年老いた父と最も親孝行な末娘のやりとりを、旅をしながらボソボソ続けている。
そこにつきまとうのが、シェークスピア5世を名乗る青年。
彼は先祖の偉業を現代的に書き改めようとしているのだが、その営為がすなわち本作の主調音と重なってくる。
ゴダールのマリア Je vous salue, Marie 1985
第一部マリアの本>マリー(レベッカ・ハンプトン)は、11歳。母(オーロール・クレマン)と父(ブリュノ・クレメール)の仲がどうもうまくいっていないようで、父の方が別居を申し出た。
受諾する母。マリーが中学に入ってから働くようになった母は、初めて社会というものを知ったようだ。
夫の支配下から抜け出し、第二の人生を始めようとする妻。
マリーは母から父が家を出てゆくことを知らされる。
しかし、マリーは何の関心も示さない。
学校で習ったボードレールの詩句を暗唱するマリー。
父は去った。
マリーは週末には、湖のほとりにある父の家に行った。
クラシック音楽を聞くマリー。
ゴダール・ソシアリスム film socialisme 2010
「第1楽章、こんな事ども」地中海を航海中のゴールデン・ウェブ号には、様々な人が乗っている。
ルワンダのキガリからヨーロッパに戻る写真家マチアス(マチアス・ドマイディ)とコンスタンス(ナデージュ・ボーソン=ディアーニュ)、黄金の時計に興奮している少年リュド、フランスの国際諜報官フォンテスなど。
スペイン内戦時の1936年頃、共和政府はコミンテルンに大量の黄金を託しバルセロナから出発させたが、オデッサで3分の1、モスクワで3分の1がなくなるという事件があった。
カルメンという名の女 prénom carmen 1983
パリのとある精神病院の一室。元映画監督のジャン・リュック・ゴダール氏(本人)は、すでに異常なしと診断されているが、病院を出たがらない。
そこに姪のカルメン(マルーシュカ・デートメルス)が見舞いにやって来た。
実は、仲間たちと映画を撮るので空家になっているジャン伯父さんの海辺のアパートを撮影現場に使わせて欲しいという頼み事が目的だった。
弦楽四重奏団の一員クレール(ミリアム・ルーセル)は、兄の友人ジョセフ(ジャック・ボナフェ)という憲兵隊員に惹かれていた。
そのジョセフが警備している銀行に、強盗一味が押し入った。
カルメンとその仲間だ。
犯行の後にジャン伯父さんの空家に逃げこむというのが彼らの計画だった。