ジャン=リュック・ゴダール Jean-Luc Godard
愛の世紀 éloge de l’amour 2001
若き芸術家エドガー(ブリュノ・ピュツリュ)は、愛における4つの瞬間である出会い、肉体的パッション、別れ、和解を、若者と大人と老人の3組のカップルを通じて描くという企画を構想している。
その主演女優にぴったりの「彼女」(セシル・カンプ)が頭に浮かぶが、清掃員をしながら子育てをし、コソボ問題の集会に通う彼女は、出演依頼に中々応じようとしない。
それでもなんとか企画が実現できそうになった時、エドガーは彼女が死んでしまったことを知らされる。
その2年前の回想。
エドガーは第2次大戦中の対独レジスタンスについての研究のため、ブルターニュの歴史家(ジャン・ラクチュール)の下を訪れる。
ワン・プラス・ワン One Plus One / Sympathy for the Devil 1968
ミック・ジャガーをはじめとするローリング・ストーンズのメンバーが、スタジオで新曲「悪魔を憐れむ歌」のリハーサルとレコーディングをしている。
レコーディングがワン・ステップ進むごとに、ストーンズたちはレコーディング用パネルに隔絶されて仕事を進める。
そのレコーディングと交錯するのは戦争を準備するブラックパワーの闘士たち、TV局のインタビューをうける民主主義のヒロイン、イヴ・デモクラシー(A・ヴィアセムスキー)、そしてヒットラーの「わが闘争」を朗読する店主(I・クワリア)のいるポルノ・ショップ。
ブラック・パワーの本拠は武装した黒人たちが、工ルドリッジ・クリーヴァーの“氷の上の魂”を朗読している。捕虜になった若い白人女性が殺される。
一方では英国のブラック・パワーのリーダー、フランキー・ダイモンがジャーナリストのインタビューに答えている。
ストーンズがレコーディングを殆ど終えた時、撮影用クレーンが、空と海に向かって延々とのび、ボリビアの革命家の声が聞こえる。
メイド・イン・usa made in usa 1966
かつての愛人リシャール・ポ……(J・R・ゴダールの声)から電報を受けてポーラ(A・カリーナ)はこの街に着く。
が、直前に彼は謎の死をとげている。
死因は心臓マヒと言うが……。
以前、モロッコ戦争をめぐって暗躍したスパイや殺し屋がリシャールの死をめぐって動き出し、彼女にまといつく。
情報屋のチフス菌(E・メンジェル)、その甥の詩人デビッド(Y・アルフォンソ)、その婚約者溝口(小坂恭子)や検死医者、失踪した女秘書、言語学の酒場の主人……。
そして地区の元締のR・ウィドマーク(L・サボ)や輩下のドナルド・ダック(J・P・レオ)は、ポーラの行動を監視し続ける。
彼女の身辺を守るのは《ラルース美食百科辞典》にしのばせた一挺の拳銃のみ。第二、第三の殺人が起き、チフスが謎の死をとげ、溝口も殺される。
パリ警察からアルドリッチ刑事(J・C・ブイヨン)が捜査に乗り込んで来た頃、ポーラは事件の核心をつかむ。
リシャールはかつてトップ屋をしていた週刊誌の論説主幹だったが、同時に党の指導グループに属し、隠然たる力の手により抹殺されたのだ。
ブリティッシュ・サウンズ british sounds 1970
第一部・ブリティッシュ・サウンズ>
映像=オックスフォードの工場でのMGスポーツカー製造の組み立て作業。
音=「共産党宣言」「賃労働と資本」「賃金・価格及び利潤」からの引用。
<第二部ミリタント・サウンズ>
映像=裸の女性。
音=女性に対する男性の専制を告発する女性活動家の声。
どのような関係における専制かと問う男性の声。
<第三部・資本の音>
映像=テレビのアナウンサーと孤独な労働者。
音・ウィルソン、ヒース、ポンピドー、ニクソン等の演説の抜粋。
低いささやきの声が、未組織労働者に団結とストライキへの決起を呼びかける。
<第四部・労働者の音>
映像=マルクシスト労働者の集会。
音=労働者たちの言葉。
賃金について、利潤について、解雇問題について、能率給についてなど。
<第五部・学生の音>
映像=学生たちが、ビートルズの唄を批判しながら替歌をつくる。
音=帝国主義と対決する映像と音を創出するためのいくつかの理論。
<第六部・革命の音>
映像=血まみれの手が、雪と泥のなかから真紅の旗をつかみかかげる。
音=全世界の革命歌。
フォーエヴァー・モーツアルト for ever mozart 1996
映画監督ヴィッキー・ヴィタリス(ヴィッキー・メシカ)は、マルローの『希望』を舞台化する『希求』の俳優オーディション中、男爵と呼ばれるプロデューサーのフェリックス(ミシェル・フランチーニ)に「宿命のボレロ」という映画の監督を頼まれる。
哲学教師で失業中の娘カミーユ(マドレーヌ・アサス)は、戦火のサラエヴォにマリヴォーの戯曲を上演しにいくことを思いたつ。
従弟のジェローム(フレデリク・ピエロ)を誘い、アラブ人メイドのジャミラ(ガリア・ラクロワ)も志願するので一緒に行くことに。
上演するのはマリヴォーからミュッセの『戯れに恋はすまじ』へと変わるが、父ヴィッキー監督もやむなくサラエヴォの旅に。
列車から車、そして徒歩へと旅は厳しくなって、ヴィッキーは脱落。若者3人は戦火地帯に入るが捕虜になり、ジャミラは犯され、カミーユとジェロームは砲火で死ぬ。
ヴィッキーはパリで男爵に会って演出を引き受け、「宿命のボレロ」を撮影する海辺へ。
女優(ベランジェール・アロー)は台詞がうまく言えず、テイクは600回を越える。