鈴木昭男 Akio Suzuki

「点音(おとだて)」and “no zo mi” 道草のすすめ in 東京現代美術館2018-2019

作家略歴
1941年平壌生まれ。
1963年、名古屋駅でおこなった《階段に物を投げる》以来、自然界を相手に「なげかけ」と「たどり」を繰り返す「自修イベント」により、 「聴く」ことを探求。
1970年代にはエコー楽器《アナラポス》などの創作楽器を制作し、演奏活動を始める。
1988年、子午線上の京都府網野町にて、一日自然の音に耳を澄ます《日向ぼっこの空間》を発表。
1996年に街のエコーポイントを探る「点 音」 プロジェクトを開始。
ドクメンタ8(ドイツ、1987年)、大英博物館(イギリス、2002年)、ザツキン美術館(フランス、2004年)、ボン市立美術館(ドイツ、2018年)など、世界各地の美術展や音楽祭での展示や演奏多数。

鈴木昭男さん インタビュー

僕は少し変わったところのある少年でした。
愛知の小牧で小学校から高校まで過ごしましたが、放課後になると、名古屋市街を見渡す近くの山に入り、石の上に座って2時間も3時間も、夕暮れまでぼーっと音を聴いていたものです。
風の音、梢のさざめき、鳥や獣の声。
ただただ無心に聴く。
森にすっかり溶け込んでいたのか、広げた手に、スズメが飛び込んできたこともありました。
親父は大の音楽好きで、家にはお琴・三味線やヴァイオリンなど、いろんな楽器があった。
レコードも多く、一般的な「音楽」にも馴染んではいたんですが、「世界を聴く」っていうんですかねぇ、野山や町の音に耳を傾けるのが好きでした。
学校を卒業し、設計事務所で働いていたころ、雑誌でアメリカの前衛作曲家ジョン・ケージの記事が掲載されていた。
弟子の作曲家の一柳慧さんが紹介していたんです。
音を聴くことの大切さ・素晴らしさを説く彼のことが詳しく書かれていて、「同じことを考えている人が居るんだ」と嬉しくなりました。

「はてな – 1」 1F屋外
美術館の正面玄関にいたる通路の右に置かれた「点音」プレートの上に行むと、美術館の大きな窓ガラスに映る空や木場公園の緑の景色が、シンメトリーになって目に届きます。
それが聴覚にも作用するのでしょうか?

「はてな – 2」 1F屋外
メインエントランスの左横にある「点音」 プレートは、美術館広場を一望する位置にあります。
それを目にした来館者が、「なんだろう??」と、気にとめるために置かれています。

「はてな – 3」 1F屋外
パークサイドエェントランス右手にある池に沿った「点音」 は、プレートが指し示す先の屋外展示場への好奇心を誘うために敷設しました。

ながめ – 1   1F屋外
美術館広場から手摺り越しに、サンクンガーデンを見下ろすポイント。
折々の企画展示や、人の出入りの様子をドラマチックに腑瞰できます。

ながめ – 2  1F屋外
美術館広場のベンチのひとつに 「点音」 プレートが備えられています。
そこに座って、ワイドな空間に耳を澄ますスポット。
ゆとりある身体の置き方には、音のチャンスがおとずれることでしょう。

きづき – 1  1F
メインエントランスからエントランスホールを進むと、片隅に置かれた「点音」プレートに出会えます。
そのマークに足を揃えて守む時、ガラス張りの空間にもかかわらず屋外同様の素通しの音が耳に届いていませんか ?

きづき – 2 1F
エントランスホールの中ほどにも、同プレートが待ち受けています。
「きづき- 1、2 」は、館内のあちこちで出会う 「点 音」の仲み方のエクササイズの場にもなっています。
(なお、ホール内での配置変えなどによって「点音」プレートの場所が変わることがあります。)

あびる – 1  1F屋外
鈴木昭男の音源をもとに音を感じる空間として制作された中庭には、二つの「点 音」 があり、ミュージアムショップのドアを出た右横のポイントは、音を浴びるのによい場所ですが、音浴は中庭のどこでも自由にできます。

あびる – 2  2F屋外
中庭の螺旋階段を上がったテラスの壁の中程を背にするポイントは、カフェでくつろぐ人たちの語らいに耳澄ましているかのようです。
そこに佇んでみると、前方の屋上の左右にある開口部が建物の耳のように思えてきませんか ?

かつら – 1  B1F屋外
地下一階の泉水の組み石の端にあるポイントに足を揃えて座ってみると、京都の桂離宮にあるような曲り家形の仲まいから、木場公園界隈の音の反射が連なって耳に届くのを楽しめます。
ただ、ガラス越しの目線に気を止めない修行の場でもあります。

かつら – 2  B1F屋外
この「点音」は、前方のガラスの映りを計算に入れ、わずかな位置関係で視界が整理されていることに気づかれることでしょう。
そうした静論さの中で、日和や時間帯によっては、水面の反映が聴覚に寄り添ってくれそうです。

はるか  1F屋外
この「点音」 プレートの場所は、《日向ぼっこの空間》のあった京丹後市の、子午線の通る網野町高天(たかてん)山と、偶然にも北緯35度40分の線上で、はるか430kmを隔てて繋がっています。
1988年に、鈴木昭男が遂行した〈自然に一日耳を澄ます〉プロジェクトのために制作した日干しブロックの空間壁に似以た石壁から、7mの隔たりで真古に向かって置かれています。