サービス業の本質
小室哲哉:エンターテイメントは相手があって、相手が喜んでくれるという、結局、気配りだと思うんですね。
気遣いだったりとか。
どれだけ考えてあげられる、気が利く、せっかくこういう、私は、僕はこういう思いに浸りたいからここに来てるのに、これを聞くのに、これは見るのに、なんでそんなとこが、ちっちゃいこと気遣ってくれないんだ?っていうことでエンターテイメントってのはその時点で潰れちゃうってか、その時点で失格と思うんですね 。
なかなか両立できないところはありますね。
なかなかプロデューサーとしてそういうこともちゃんとやりつつ、ミュージシャンとして、アーティストとして自由気ままにわがままで、勝手なまあ、自分のやりたいことで自分のメッセージを伝えてって言うことで、動くのは最近思いますけど、全然別のものでいいんですよ。
アーティストは自分の世界に入っていて、それが好きなそれを好きな人がいてくれて成立するって感じなんですけど、プロデュースはまた、それとちょっと違うような気がしますね。小室と袂を分かったエイベックスは新たな船出をすることになった。
松浦勝人 :ギャップというか振れ幅が、どんだけでかいんだっていうことが非常にその重要であって、真ん中で重心が取れてれば成立するわけじゃないですか。
そこが崩れちゃうと倒れちゃうということ。
見城徹:両方に振り切っている時に、一番見えないものであっても心の中だから、風が起こってるわけですよね。
だから熱が起こるたりエネルギーが出たりするわけですよ。
そこに人が惹きつけられる、その人の魅力とかエロチズムっていうのはそういうことだと思う。
心が動いてない人ってやっぱり人を惹きつけられないね。
こっちに触れてこっちに触れてで真ん中でなんとか重心を撮ってる時に人は一番エロチックなんです。
それがない人ってそんな人もクリエイティブな仕事はできないですよ。
松浦勝人 : つまらないんですよね。
見城徹: 何かを生み出す原動力にならないし。
不安でいっぱいなんだから 。
松浦勝人 : 人間としての技量や器がいっぱいいっぱい。
いっぱいいっぱいだから頑張って、そのままヤドカリじゃないけど、またでっかいとこに、していかないといけない。
そのためには切羽詰まっても、やっぱ苦労だとかいろんな辛いことだということをたくさんある小さいことから始まって、大きなことがたくさんこなしていくから、そういう自分の人間としての器が大きくなって、今いろんな大したことないことは簡単にこなせるようになっていくわけで。
松浦勝人 : 退屈なのが一番やなのよ。
だから自分をなんかさらけ出したり、切り刻んだりして差し出して初めてエンタテインメントできるという風に思ってるわけでね。
それがない奴と付き合えないですよ。
松浦勝人 : 分かります全部さらけ出して、てみるんですよ。
なんでもかんでも。
それでダメならダメなんですよ。
その人とは付き合えないんですよ。
それはなんか人によっては、ちょこちょこ出て出してくる人とか、なんか一緒に食べませんかとか。
話してこの人と会う会わないっていうのはね、昔よくした失敗って最初は何かありそうだなーって思って、でもなんか会ってると、ちょっとそこの部分がオブラートに包まれて、分からなくなって、付き合ってみて最終的にうまくいかなかったり失敗するんですけど。結局最初に思ったことが正しい。
正しいんです、それはほとんどそうです。
なんでこんなに必死なんだろうって。
それも最初アルバイトの貸しレコード屋のころは、自分の店でもないわけですから。
本当はこの店のために、こんなに一生懸命自分の時間も削って、寝る時間も惜しんで働いてるんだって、全く意味が分からない時期もありましたよ。
見城徹: でも君がこの作品をヒットさせるんだって言った時の、もうとんでもない人への、人を巻き込んでいく吸引力っていうもの。巻き込まれれば、血は出るし。
ここはもうそこまで行ったらルール違反だよとかって言うと、ルールなんかねえよそんなことに。
君の声が聞こえるわけで、つまりそれは君は欲望に忠実なものすごい、君のあの俺は特徴だと思うよ。
これだけ自分の作品を産むってことに対して、欲望に忠実にやる人はいないよ。
松浦勝人 : 否定しないですし、否定はしないです。
その一番、顕著はやっぱり浜崎になっちゃうんですけど。
やっぱりそこの成功事例があって。
エイベックスが大きくなっていって。
ここまで来ちゃうとその強引さんっていうものは消費者、見抜いちゃうんですよね。
あゆの時とは違って。
見城徹: 日本で初めてのテレビ制作会社 「テレビマンユニオン」を作った萩本晴彦さんっていう人がいるんですよ。
その人がもう亡くなっちゃったけど、残した言葉で「全ての新しいもの、すべての美しいもの、すべての素晴らしいものはたった一人の人間の熱狂から始まる」って言ってたよね。
ほらね、君こそ本当にその言葉に当てはまる奴だと思うよ。
君のね、熱狂から、全ては始まってんだよ、エイベックスは。
ここまで来たの。
だから、社長やってんの当たり前のことだし。
それで辛いのも当たり前のことだし。
そこからしか何も起こらないですよ。
松浦勝人 : ここまで あのなんか褒められると。
見城徹: 「熱狂」持ってる人間を入れるって事ですよ。
狂気じみたやつを入れろっていうことですよ。
その一人の狂気じみた奴がいなかったら、そのプロジェクトは成功しないと思っています。
全部そうです、映画だって、表現するものに係るビジネスは全部そうですね。
一人の狂気じみたやつを入れない限り、ダメなんですよ。
アベレージでやったって、みんなの合意でやったって、素晴らしいもの、新しいもの、美しいものはできないのよ。
だから一人の「松浦」を入れろって。
どれだけしかわかんないの。
松浦勝人 : 自分で言うのも変ですけど、あんまりないと思います。
見城徹: ほら、もうもう本当にびっくりするよ。
だけどそいつらこそが、本当に素晴らしいコンテンツを創る、新しい作品を作る、難しいもの作ると思うから、どんな苦労も厭わないでやってきたわけで。
その変な人いっぱい見てきた、その人達、変な人こそは本物のコンテンツを作る、それが俺が一番満足することなんだって言う。
それを知ってるから全部やってきたその俺が、「お前が、一番変な変なんだよね」。
松浦勝人 : あれはどうですか。
新人を見つけるとき、育てる時は。
見城徹: 自分の感覚を信じるしかないんじゃない!?
これは今、世の中に流通してないし、埋もれているけども、これは絶対に俺は感動した、これは面白い。
松浦勝人 : どうして、歌がうまくて、こっちの人はあんまり良くないのにこっちの人なんですか!?って言われても、こっちの人だからこっちの人なんですよっていう以外の理由はないんですよ。
僕にとってはこっちがいいと思ってるだけで。
いいと思うものじゃないと一生懸命売る気にはなれない、絶対なれないですね。
うちの会社(エイベックス)っていうのは、やっぱりどっかトップダウン的なところが昔からあるから。
上からアーティストが落ちてくるスタイルなんですよ。
僕たちが決めてやれって言う。
僕らが支持して。
ほかのレコード会社から来た人たちは、うちに来ると、自分たちが見つけて育てて売ることに喜びを持っている人がうち(エイベックス)に来ると、上からアーティストが降りてくるから。
自分が持ってたのと違うっていう人がいるんですよ、たまに。
でも、その人に何が見つけられるの !?
何も見つけられないんですよ。
見城徹:君が、たまたまそのトップにいるってだけで。
圧倒的に君が優れているんだから。
トップダウンとはまた違うんだから。
松浦勝人 : 社員が見つけてきたアーティストをやりたいって言った時に、「ダメ」って言ったことは一度もないし。
一度もないどもその代わりに、1度も大ヒットしたこともない。
見城徹: でもこれからもっと、こいつはすげえなっていう社員が現れるかもしんないよ。