ジャン=リュック・ゴダール  Jean-Luc Godard

映画はその役割を果たす術を知らなかった

ジャン=リュック・ゴダール  Jean-Luc Godard

インタビュー
〉即座に二人の映画作家を取材したいと思いました。
スティーブンスピルバーグとあなたです。
実際、私たちは、あなたたち2人が映画の2つの基本方向を代表していると感じているんです。
G ごもっとも。僕は過去、スピルバーグは現在。
〉私たちの考えでは年齢は問題ではありません。
G 同感だね。それにフォークナーはこう言っている。「過去はけっして死なないし、過ぎ去ることもない」。だから、ぼくはまだ自分を現在に位置付けることができるんだ。僕のことを思い出すのは、誰も僕の映画を見ていないからだ。スピルバーグのことをしょっちゅう思い出しながら、彼の映画のことを思い出さないのは、彼の映画を見ているからだ。
〉そう言われるかもしれませんが、事実は違います。「勝手にしやがれ」「軽蔑」「気狂いピエロ」は見られています。
G そう、そう思いた人がいれば。みんな見たと思い込んでいるんだ。
〉この世界の外にいる誰かに映画とは何かを説明することになったら、なんとおっしゃいますか?
G それには答えられないね。なぜなら、映画は世界の中にあるからだ。結局、世界は映画に潜んでいる。国会議員を敵視したド・ゴールのいった意味でだ。彼はマルローにこういった。「連中と我々の違いは連中はフランスに潜んでいるが、我々の場合、フランスが我々に潜んでいるという点だ」。世界は絵画やほかの形態の芸術に潜んでいるのと同じように映画に潜んでいる。50年代の一時期には、キャメラという語が、「パン」という単語と同じくらいよく知られていた。もう今ではそうはいかない。

ジャン=リュック・ゴダール  Jean-Luc Godard