プレックス剤+塩基性カラー
新しいカラー剤の誕生によって、ハイライト(ウィービング)+カラー(クリームタイプやリキッド、塩基性カラー)が提案しやすくなりました。
カラー施術で「液体カラー」や 「塩基性カラー」といった、シャンプー台で施術する ハイスピードな剤に変えることによって、 ホイルワークのダブルカラーを時短施術。
また、「 液体カラー」や「塩基性カラー」と ジマレイン酸系プレックス剤を組み合わせることで、発色のムラや根色を抑えることも可能です。
ジマレイン酸と液体カラーと塩基性カラーの組み合わせは、そもそもサロンにとってどんなメリットがありるのでしょうか?
日本ではあまり馴染みのない「液体カラー」。
染料の反応メカニズムは普通の酸化染毛剤と変わりませんが、液体カラーは反応スピードに特化した商品です。
「起泡材」が入っている為、アプリケーターに入れてシャンプー台で泡立てながら塗布していくと約5分で発色します。
日本では酸化染毛剤(クリームタイプ)が多数派ですが、アメリカでは半々くらい。
アメリカでは多民族国家で髪質も色々。
根元がキレイに染まっている以上に、毛先の褪色を抑えたいニーズが多いのです。
ヘアカット、プラス短時間で色素補充のニーズが高いのです。
ここ数年、ブリーチでハイトーンの「グラデーションカラー」、「バレイヤージュ」の根元が暗く毛先が明るいデザインが増えた来たきました。
そこで、液体カラーや塩基性カラーなど、色の賞味期限が短くても短時間で色素を補充できるカラー剤として出てきた商品です。
液体カラー
「液体カラー」とは、 医薬部外品の酸化染毛剤で、1剤、2剤共に「液状」のカラーのことを指しています。
「リキッドカラー」とも呼ばれています。
日本ではまだ知られていませんが、欧米では、通常のクリームタイプと半々くらいの市場です。
特長としては、スピード(シャンプー台塗布で約5分)、発色の仕組みは、クリームタイプのアルカリカラー剤とほぼ同じ(ただしアルカリ度は低く、微アルカリや低アルカリに設定されていることが多い。また2剤のオキシ設定が低い場合が多いので、リフトカ[ブリーチ力]はあまりない)。
普通はアルカリ度が高く、オキシ濃度が高いと反応速度が速い傾向ですが、なぜ反応速度が速いのでしょう?
実はここに、液体カラーをより有効に使いこなすカギがあります。
通常、液体カラーには「カチオン(プラス電化)」が含まれませんが、クリームタイプのカラー剤には、 クリーム状にするために「カチオン系基材(カチオン化ポリマーなど)」が添加されています。
イオン的にプラスの電荷を持つカチオンは、マイナスの電荷を持つ毛髪表面に付着するので、成分の浸透を妨げる現象が起きます(ちなみにジェルカラーや泡カラーと呼ばれるものもカチオンフリーが多い)。
そのため「カチオン入り」のクリームタイプに比べて、「カチオン無し」の液体タイプのほうが、浸透スピードが早いと考えられます。
また塗布スピード(操作性)も、クリームより液状のほうが早く施術できます。
起泡剤で泡状になるのであればなおさらです。
カチオン無しのデメリット
浸透を遅くする「カチオン」が入っていないので反応速度が速いのですが、デメリットもあります。
トリートメントやコンディショナーの主成分が「カチオン系界面活性剤」であり、「カチオン」には毛髪をなめらかにしたりサラサラ感を出したりという、質感向上効果があるからです。
「液体カラーはきしみやすい」と言われやすいのです。
ですから液体カラーの後には、質感向上のための後処理やトリートメントをセットにしておくことをおススメします。
またもうつのデメリットは、CMC(脂質)の不足です。
クリームタイプのものにはCMCなどの脂質が添加されていることが多いのですが、液体カラーには含まれていないと考えられます。
CMCは仕上がり時の手触りやツヤ感を生むと同時に、ダメージホールを埋めて状態 均一化する働きもあるので、ムラを防ぐ効果があります。
液体カラーの失敗で「色ムラが起きた」という声を聞きますが、ダメージ毛に使用する際は特に、前処理としてのCMCやシステインなどで内部を充填してから施術をしたほうが安全でしょう。
ジマレイン酸系プレックス剤も加えると、より発色の向上や裾色防止効果が上がるはずです。
塩基性カラーの特徴
ハイトーンカラーやグラデーションカラーの人気で、 塩基性染料やHC染料など、化粧品分類の染毛料も使われることが増えてきました。
塩基性染料はヘアマニュキュアと同様、イオン結合で染色するカラー剤ですが、
この二つは逆の仕組みで染まります。
「酸性染毛料(通称ヘアマニキュア)」の染料は、 水に溶かすとマイナスに帯電する性質を持っています。
酸性染毛料自体は、pHが酸性に調整されているので、毛髪に塗布すると、毛髪はプラスに帯電します。
そこでマイナスに帯電した染料とプラスに帯電した毛髪が磁石のように引き合い、結び付いて(=イオン結合)、染色する仕組みです。
電気的な力で染まっているので、 色の持続は3週間程度です。
一方「塩基性染料」は弱酸性~弱アルカリ性。
プラスに帯電する性質を持った染料です。
ですからマイナスに帯電した毛髪表面に吸着し、染色する仕組みとなっています。
そのためダメージが進み、マイナスに帯電した髪にこそよく吸着します。
ヘアマニキュアと同じイオン結合による染色ですが、原理は逆というわけです。
もう一つ、HC染料というものもありますね。
HC染料はヘアマニキュアや塩基性染料のようにイオン結合はしません。
色素自体が小さいため、コルテックス深部にまで浸透することが可能なので、そこで染色するのです。
ただし結合しない分、持続力は弱いという欠点があります。
そのため、塩基性染料とHC染料の双方が配合されている製品も多く、また塩基性染料やHC染料はカチオン界面活性剤との相性がいいので、コンディショニン
グ効果の高いトリートメントカラーとして使われることも多いようです。
毛髪をアルカリに寄せたほうが、染料の吸着力が増すはずだが。
塩基性染料のイオン結合の仕組みを考えると、塩基性カラーを塗布する際は、髪がマイナスに帯電していたほうが吸着しやすいことが分かります。
ですから理論上は、塩基性カラー前には酸性のプレックス剤を塗布して、髪をプラスに帯電させるのは吸着力を下げるはず …なのですが、実験結果を見ると、ジマレイン酸系のプレックス剤をブリーチとカラー前に使ったほうが、圧倒的に発色も色持ちも向上していますよね。
なぜでしょうか?
これにはブリーチの有無が関係していると思われます。
ひとつはブリーチのアルカリ度が強いので、ブリーチ直後の施術ではジマレイン酸やバッファー剤でもpHが落ちきっていないため。
もう一つはブリーチによる毛髪強度の低下が、ジマレイン酸によって軽減された結果、「有り」のほうが、発色も色持ちも良くなった。
またブリーチ剤の強いアルカリが、塩基性カラーの染料を壊してしまうことを防いだ…などの理由が考えられます。
結論から言うと、ブリーチ直後にはジマレイン酸系プレックス剤を使用したほうが良い結果が得られると思います。
逆に白髪の健康毛などに塗る場合は、毛髪をマイナスに寄せておく必要があります。
カラー前にアルカリ処理剤などを塗布して、髪をマイナスに帯電させておくと
良いでしょう。
毛先のみのブリーチオンカラーなどの場合は、ブリーチ無しの部分にはアルカリ処理をしておかないと、色が乗りにくいはず。
塩基性カラーの場合は、良かれと思ったプレックス剤塗布が、マイナスに働くことがあるので注意しましょう。