80年代ファッション アニエスベー メンズビギ スタジオV

anan編集部に配属されてまだひと月ちょっと。ピカピカの1年生。ファッションに特別に興味があったからananへ、という訳ではなくて、むしろその逆。それまでデザイナーズ・ブランドの服を着たこともなければ、とりたてて着たいと思ったこともなかった。はっきり言ってファッションには無関心。さあ、そんな黒田さんだから大変。編集部の自分のデスクに初めて座った日。まわりで忙しそうに働いているファッショナブルなスタイリストの人達を見るにつけ、自分が別世界にいるような気がして落ち着かなかったという。そんな訳で、只今、四苦八苦奮戦中。
そんな黒田さんにある日突然、企画会議の席上で「変身せよ!」との編集長命令が下った。エッ、とビックリしたのは言うまでもない。さあ、タイヘン。女の子である以上、時にはワッと変身してみんなを驚かせたいと密かに思うことはあっても実際に、それも紙面上でだなんて。黒田さんは大いに困った。というより不安がいっぱい。それまでの服装だって「シンプル イズ ベスト」とばかりにカジュアルな物ばかり。夏はTシャツ、冬はセーターにパンツを適当に組み合わせるだけ。街でお洒落している人を見てもそれほど心動かされることもないし。彼女、はっきり言って悩みました。
怖気づく彼女を尻目に話はトントン拍子に進み、スタイリストは黛比佐子さん、ヘア&メイクは「SASHU」の本田正太郎さん、というふうに変身のスタッフも決まって、ついにその日がやってきた。「見方によってはチャンスですよね。プロのスタッフの方達によって変身させてもらえるんだから」なんて、彼女、当日はスッカリその気になっていた。女ってホント、不可思議。さて、おしゃれ無関心の彼女の返信やいかに!?

髪型が変わったら、心もはずむ。そこで、以前から思ってた、「アニエス b」を着てみる。

ヘアを変えてキチッとメイクをしてからの黒田さん。なんだか口数も少なくなってすっかり気分に浸っている様子。「とりあえず変身の最初としてどんな服が着たいの?」と黛さんに問われてハタと困ってしまった。「私、そういうことってあんまり考えたことなくて、その」なんてちょっと当惑。そこでひとしきり悩んだ後に着てみたいと、と彼女が言ったのが「アニエス b」。
なんとなく名前がキレイで前から気になってはいたのだそう。それにシンプルというのも気に入っている。
その彼女の希望を尊重して黛さんがコーディネートしてくれた。ブルーとグリーンは彼女の好きな色。すっきりした重ね着。ちょっぴりあった抵抗も新鮮な刺激に変わっていく。

鮮やかな新しい色に包まれて、気分はもうすっかりモデルさん。フェミニン、かつボーイッシュに。

地味で普通の女の子、黒田さんのイメージをさほど過激に変えないで、今度は色で遊んでちょっと冒険してみよう、ということで黛さんが選んできたモノが左。今年流行のペイズリーのプリントシャツに鮮やかなオレンジのVネックセーター。その上に、派手なブルーのジャケット&スカートを組み合わせる。形はすべてオーソドックスなものばかりで、とにかく色であそんだ。「こんな色のオレンジのセーター、ホントは前から着てみたかったんですよね。それにブルーの上下も素敵だし」とウキウキの黒田さん。笑顔にも普段の余裕が戻ってきている。大人の女っぽさが漂うなかにボーイッシュが見え隠れしているコーディネート。ちょっと気取って街でも闊歩(かっぽ)!なんて。

こんなにもマニッシュになれた私。このままずっと、どこまでも、この街を闊歩してみたい。

最初の撮影では緊張が全身にあらわれてたのに、3着目ともなるとリラックスムード。今度の服はマニッシュにきめてみた。同柄、同系色のシャツとコートで面白味を出す。ポイントは少し濃いめのネクタイで。「ボーイッシュな感じ好きだから、着ていて一番無理ないです」。パンツルックの多い彼女としては当然の感想か。「でも、まだ服に着られているみたいで落ち着かないんですよね」と不安顔。
そんな彼女に黛さんからのアドバイス。「服を着こなすのはその人の気の持ち方ひとつ。こことの底からお洒落したいと思って着たら服の方で馴染んで来るものよ」ですって。彼女にはとっても参考になったみたい。今後の彼女に期待!