美容師ブログ 第3章 鶴丸先生に師事し新宿マスターズサロン(日本で初めてのプロの美容師育成機関)に転勤➀。
2023年現在、高円寺でオーナー美容師をしています。
東京の窪田理美容専門学校を卒業し、インターン(今はこの制度はありません)から美容師を約30年近くしています。
これから、僕の美容室が気になって来店するお客様のための動機の一つの「どんな美容師さんなんだろう?」という経歴、人柄を来店前に理解してもらうという事と自分の歴史の一つに「プロフェッショナルの美容師育成のスクールの先生時代」があるため、美容師を目指す人の参考になればという思いがあり、書き進めようと思います。
美容師技術習得の現在・未来
今の時代(2024年)、技術を学ぶ・伝える方法として動画の活用が主流になりつつあります。
いつでも、どこでも、何度でも繰り返し見れるのが人気なのです。
HAIRCAMP
hairstudy
僕がアシスタント当時、90年代は先輩に教わる、又は有料の講師のセミナーに参加が一般的でした。
働き方が変わった現代、うまく、組み合わせることが”教える側””教わる側”双方にメリットがありそうです。
僕は店長からカットを教わり、先輩スタイリストの助けもありスタイリストデビューが出来ました。
自分が先輩から技術を教わり、後輩に伝えていくという伝統です。
伝統的な人と人が密な関係の時代の技術伝統のデメリット
- 教える側、教わる側が営業時間外で残業の形になります。
- 教育担当の教え方や内容に個人的な差があります。
- サロンが美容師の育成プログラムに新しくリニューアルをし続けないとカリキュラムが古くなる。
伝統的な人と人が密な関係の時代の技術伝統のメリット
- 動画では伝えきれない細部までフォローアップ。
- スタッフ同士の結びつきが深くなりやすい。
動画勉強のメリット
- 時間に制約を受けずに学べる。
- スタッフの人間関係に左右されない。
- 勤めているサロン以外のトレンドの勉強ができる。
動画勉強のデメリット
- 細かな技術説明や自分が気づかない箇所へのフォローアップが期待できない。
- 自己負担の有料動画料金が発生する。
アシスタントからスタイリストになる為に必要になる知識・技術はサロンにより違いはありますが、基本的な物は共通しています。
アシスタントからスタイリスになる為の習得項目
- 就業規則 会社の理解
- 施術準備
- 接客マナー
- マニュピレーション(マッサージ)
- トリートメント
- シャンプー&リンス
- カラーシャンプー(カラーシャンプーは頭皮にカラー剤が残ると問題になるので要経験)
- グレーヘアーワンタッチカラー塗布
- ワンメイクカラー塗布
- ヘアマニキュア
- ストレートパーマ・縮毛矯正
- 美容知識・毛理論・パーマ理論・カラー理論・商品知識・シャンプー知識
- パーマ・オールパーパス (ウィッグ)
- オールパーパス (モデル)
- ウェーブ (タテ巻き・根元・中間毛先)
- フォワード・ショートスタイル「セシール (ロット&ピン)」
- カーラー巻き
- カラー特殊・ホイルワーク
- バレイアージュ
- ハンドドライ
- ワンレンブロー
- ハイレーヤープロー
- アイロンカール
- ハイトーン・ブリーチカラー
- モデルパーマ、ブロー
- ワンレンカット
- ハイレーヤーカット
- ショートグラデーション
- ショート刈り上げ
- 各サロントレンド・ヘアカットなど
これだけの知識・技術を身体に覚えこませる練習を日々行います。
大きなサロンになると、サラリーマンと同じように目標・ノルマが設定され自己向上を目的として月ごとの売り上げ目標達成を管理します。
美容師はお客様の技術に対する要求にこたえる”職人・技術者”であり、お客様にトレンドや髪質・骨格・体型・年齢からアドバイスを行う”デザイナー・スタイリスト”であり、会社・サロンで扱う商品・シャンプーやトリートメントを販売する”販売員”です。
美容室には大きく分けて3種類の形態に分類されます。
- 小規模オーナーサロン カット・パーマ・カラーの技術に価値を置き、サロンイメージを強く持つ職人型サロン。
- 中規模モード系サロン アパレルショップのようなブランド力を持ち、ヘアスタイルを商品のように捉え、内装やスタッフイメージも大切にしています。
- 上場型経営者サロン 経営者が事業を拡大しビジネス、マーケティング、教育、経営を行う会社型サロンです。
美容師の働きかた・4つの形態
- 正社員 固定給があり、 社会保険が完備されているサロンもあります。 サロンによっては固定給を少なめに設定して、 残りのお給料は歩合制にしている会社もあります。
- パート・アルバイト・派遣社員 派遣会社が美容師の条件にあったサロンを紹介。 派遣会社との雇用契約とはなりますが、 実際の仕事は派遣先のサロンで行い、仕事の指示などもサロンから受けることになります。
- 業務委託 美容師とサロンの間で契約を交わし、報酬の交渉 (例:サロン: 美容師=6:4など)をします。 社会保険はありませんが、正社員で働くよりも大きな収入を得る可能性があります。
- 面貸し 美容師がサロン内の一部またはシェサロンを借りて営業し、 場所代として一定の金額をサロンに払うという契約です。 時間貸し、月貸しなど。
美容師さんとしては自分がどのような美容師になりたいか、将来のビジョンをイメージしながらサロンを選ぶことが大切です。
お客様としては自分がどのようなヘアスタイル、居心地よさをイメージしてサロンを選ぶと間違いが少なくなると思います。
豪徳寺店からマスターズサロンへの転換
僕が働いた90年代の萩原宗美容室は東京都内・横浜・川崎周辺で10店舗ほどの規模でした。
この時代は正社員型美容室しか存在しなく、今のように多様性に富んでいませんでした。
そして、完全なる職人型の美容室。
豪徳寺では理論は専門誌で独自で勉強し、基本は先輩の身体を見て覚えるでした。
何故そうなるんですか!?など質問はしていなかった気がします。
スタイリスト試験を受け合格した反面、不安が頭を過っていました。
何故かというと、他店舗の同期と話をしても同じ技術に対して、やり方・方法が違っていました。
見て覚えるという職人型の世界では独自のやり方でスタイリストが存在していました。
”他の人のやり方は解らないが、自分はこうしている。”
という答えが多かったのです。
僕は”どうしてこのような施術・やり方なのだろう?”
と疑問だらけでした。
一つの方法論で髪型を造ると、頭の形、年齢、髪質の細い・太い・硬い・柔らかい・クセ毛・直毛に対してお手上げという状態でした。
そして、ヘアスタイルを創造する原点が何もない状態で不安だらけです。
どのような根拠で目の前のお客様に似合うヘアスタイルを提案できるのか?
僕が見て来た多くの美容師はお店で学習したヘアスタイルのパターンを提供している人たちが殆どでした。
音楽もファッションデザインもプロダクトは歴史から学び、国ごとの時代や風土、そのプロダクトに必要な基礎を学ばなくては、10年後、20年後の未来に対する対応や自分自身の作品のマンネリ化により、興味や創作の意欲が喪失されます。
僕は今でも覚えています、人生の転換点。
90年代の勤めていた美容室では店舗ごとに売り上げの格差が生まれていました。
技術を務めている店舗だけで教わるという事は、店舗ごとの技術を定期的にチェックをしなければ統一が生まれません。
そこで会社は店舗の売り上げ差を埋めるために、同じ会社でもある新宿御苑にあるプロの美容師を育成するマスターズサロンに通学させるという手段を選びました。
新宿のマスターズサロンは北海道から沖縄まで、台湾、韓国という幅広い美容師に技術のフォローアップを行う学校です(今は存在しません)。
それまでは、現場の豪徳寺で働いていた時は全く、マスターズサロンとは接点がありませんでした。
何もわからずに、スタイリスト合格した僕に一定期間、新宿御苑のスクールに通いなさいとの通告を受けました。
会社は各店舗の売り上げの格差を是正したかったのだと思います。
そこでは、生徒さんが一般の美容室と同じくお客様はモデルとして、ヘアデザインを提供し料金を頂くというシステムでした。
一般のサロンと違う点は、料金は低価格で設定され(当時は2000円くらいでした)、カットなど施術終了後は講師(先生)がチェックに入り、学習するという授業の一環だという事です。
イギリスのビダルサッスーンスクールのような専門学校や国家資格のない国では生徒がサッカーの球団ユースシステムのようなお金を払って、プロを育成する機関が存在します。
そこで実践を積んで美容室に就職するシステムです。
日本では美容師になるには国家試験が必要なので、専門学校という形になっていますが実践に添わない基本を学校で教わり、現場の美容室で教えてもらうという形が多いのです。
マスターズサロンでは実践を基本として、原理原則を授業で教わり頭で理解し、身体で憶えていく実践技術をカリキュラムに沿って教えていました。
僕たち現場の萩原宗美容室スタイリスト合格者は授業は受けられませんでした。(同じ美容室の社員なのに何故なのか未だに解りません。)
スタイリスト合格したものの、ヘアスタイルに対し疑問だらけの状態で何か正解を見つけたいと思っていた僕は時間を見つけて、授業を見に行きました。
そこで行われていた授業・理論はその当時の僕は全く理解できなかったのです。
授業が終わって、何度か見かけたことがある校長の鶴丸さんに「豪徳寺店の研修で伺わせて頂いているスタイリストの鈴木です」と挨拶をし、普段現場でヘアカットをして他の店舗のスタイリストと何故切り方が違うのか、見て覚える現場で解らない現状を伝えると、優しく黒板の前に立ち骨格の図形を描き5分くらいで全てを説明してくれた。
この瞬間、僕の人生は動き出した。
生涯の師匠との出会いの瞬間でした。
下のイラストは鶴丸先生(マスターと呼ばれていた)は滝川伊豆ビューレックという美容師さんたちが短期の住み込みで研修する機関で先生の外部講習を持っていて、受講生が鶴丸さんの似顔絵を描いていたそうです。
それを鶴丸さんが気に入って首から下をデザインし、名刺代わりに使っていました。
薩摩出身の侍を思わせる真の通った人柄でしたが、愛情深く多くの未来の美容師を育てていきました。
本当に感謝しかありません。