園子温 SION SONO
恋の罪 Guilty of Romance
どしゃぶりの雨が降りしきる中、ラブホテル街のアパートで女の死体が発見される。
事件担当する女刑事・和子(水野美紀)は、仕事と幸せな家庭を持つにもかかわらず、愛人との関係を断てないでいた。
謎の猟奇殺人事件を追ううちに、大学のエリート助教授・美津子(冨樫真)と、人気小説家を夫に持つ清楚で献身的な主婦・いずみ(神楽坂恵)の驚くべき秘密に触れ引き込まれていく和子。
事件の裏に浮かび上がる真実とは……。
3人の女たちの行き着く果て、誰も観たことのない愛の地獄が始まる……。
冷たい熱帯魚 Cold Fish
小さな熱帯魚屋を経営する社本信行は、ある夜、娘の美津子がスーパーで万引きをしたため、妻の妙子とともに店に呼び出された。
その場を救ってくれたのは、スーパーの店長と知り合いの村田幸雄。
村田は巨大な熱帯魚店、アマゾンゴールドのオーナーだった。
帰り道、村田に誘われ店に寄る事に。
そこで美津子を住み込みの従業員として預かる事を提案され、無力にも了承する社本。
さらに数日後、村田から“儲け話”をもちかけられる。
部屋/THE ROOM
殺し屋稼家に疲れ果てた初老の男は、不動産屋に飛び込み、女係員に部屋探しを頼む。
数々の殺してきた亡霊たちに追われるようにして、男は死に場所を求め、係員とともに部屋から部屋へと巡り歩いていく。
部屋探しの二日目、男は係員に案内され、遂に理想の、窓から見える眺めだけが唯一の取り柄の部屋に行き着く。
そこが男の死に場所だった。
彼は拳銃の引き金を引き、椅子に座ったまま息絶えるのだった。
自転車吐息
愛知県豊川市に住む史郎は、悶々とした日々を過ごす三浪の予備校生。
ある障害を自力で克服した妹・方子が自転車で新聞配達をしているのを見ならって自らも始める史郎だったが、それと入れ替わりに方子はやめてしまうのだった。
史郎は高校時代の仲間の圭太と一緒に作った8ミリ映画「一塁」の未完成が気になっていた。
圭太を誘いもう一度再開しようとアイディアを持ちかける史郎だったが、受験のことで閉鎖的な心情の圭太は、あまり乗り気ではなかった。
そんな時、東京の大学に進学した仲間の京子が帰ってくる。
戸惑いながらも京子の家へ行く圭太。
しかしそこには京子の大学の先輩も居合わせ、圭太は飛び出してしまうのだった。
紀子の食卓 Noriko’s Dinner Table
島原紀子(吹石一恵)は平凡な女子高生。妹・ユカ(吉高由里子)、新聞記者の父・徹三(光石研)、母・妙子の4人家族。
紀子は田舎でくすぶっている自分や、家族との人間関係に苛立ちを感じていた。
そんな中、“廃墟ドットコム”という全国の女の子が集まるサイトを見つけた紀子は、そこで「ミツコ」と名乗り、ハンドルネーム「上野駅54」や他の仲間たちと知り合う。
彼女たちとなら何でも分かり合えると感じた紀子は、ある夜、家出して東京へ向かう。
気球クラブ、その後 KIKYU CLUB. SONOGO
サークル“気球クラブ・うわの空”には、本当に気球が好きな人、寂しさを紛らわしたい人、恋愛や友情を求める人など、さまざまな想いを抱いた若者たちが集っていた。
5年後、ガールフレンドのみどり(川村ゆきえ)と微妙な関係を続けている二郎(深水元基)のもとに、かつての仲間から1本の電話が入る。
サークルのリーダーだった村上(長谷川朝晴)が、突然の事故で亡くなったという。
このことをきっかけにバラバラになっていたメンバーは再び集まり、村上を偲んで大宴会が行われることになった。
愛のむきだし Love Exposure
幼い頃に母を亡くし、神父の父テツと二人暮しのユウ。
理想の女性“マリア”に巡り合うことを夢見ながら、平和な日々を送っていた。
しかしテツが妖艶な女サオリに溺れてから生活は一変。
やがてサオリがテツのもとを去ると、テツはユウに毎日「懺悔」を強要するようになる。
父との繋がりを保つために盗撮という罪作りに没入していくユウ。
そんな彼はある日、罰ゲームで女装している最中に、ついに理想の女性ヨーコと巡り合うが……。
ヒミズ himizu
住田佑一(染谷将太)、15歳。彼の願いは“普通”の大人になること。
大きな夢を持たず、ただ誰にも迷惑をかけずに生きたいと考える住田は、実家の貸ボート屋に集う、震災で家を失くした大人たちと平凡な日常を送っていた。
茶沢景子(二階堂ふみ)、15歳。
夢は、愛する人と守り守られ生きること。
他のクラスメートとは違い、大人びた雰囲気を持つ住田に恋い焦がれる彼女は、彼に猛アタックをかける。
疎ましがられながらも住田との距離を縮めていけることに日々喜びを感じる茶沢。
しかし、そんな2人の日常は、ある日を境に思いもよらない方向に転がり始めていく。
借金を作り、蒸発していた住田の父(光石研)が戻ってきたのだ。
ちゃんと伝える
北史郎はとある地方都市のタウンマガジンの編集をしている。
高校のサッカー部の鬼コーチで知られる父・徹二が突然倒れ入院し、癌を宣告されてから、毎日1時間だけ父親が入院している病院へ通っていた。
そんなある日、自らの体も病に冒されていたことを父の担当医から知らされる。
父親より病状は悪く、父親より余命が短い可能性が高いと言われた史郎は、家族や恋人のことを思い、誰にも言えずにいた…。
EXTE エクステ
海辺の美容室で働く優子(栗山千明)は美容師の卵。実の姉(つぐみ)がその娘に虐待を繰り返していることに心を痛めつつも、店のオーナーの佳代(山本未来)のもとで一流美容師を目指して励んでいた。
そんなある日、膨大な量の髪の毛に埋め尽くされた巨大コンテナが横浜港に到着した。
その異様な船内からは少女の遺体が発見される。
少女は臓器売買の為に外国で誘拐された闇社会の犠牲者であった。
うつしみ utushimi
おでん屋の男に、抱いて欲しいと告白した走り続ける少女。
男は、そんな少女を遊びのつもりで抱いてやるが、いつしか彼女を愛するようになる。
少女の行方を捜し、自らも走り始める男。
だが、既に少女には別に好きな人が出来ていた。
しかし、男は疾走の果てに怪我を負いながらも少女にプロポーズ。
少女は、そんな男を背負って走り出す。
Strange Circus 奇妙なサーカス
実の父親・尾沢剛三(大口広司)に犯される小学生の美津子(桑名里瑛)。
幼い美津子はそれを忌むべき近親相姦とは知らず、ただ心がズタズタにされていく毎日だった。
ある日、美津子を抱く剛三の姿を、母親の小百合(宮崎ますみ)が発見してしまう。
激しく泣き崩れる小百合。
それでも母と娘を交互に抱く剛三。
小百合は次第に美津子を女として嫉妬し始め、愛する剛三を奪われまいと今まで以上に激しいセックスに耽り、美津子は剛三に抱かれている間、そんな母を自分の心の中に宿すようになる。
HAZARD ハザード
1991年、日本。
「退屈なだけの日曜日、どこへ行こうか」シン(オダギリジョー)は平凡な学生生活を送っていた。
恋人との冷めた関係、退屈なクラスメート、希薄なリアル。
なにも無い日常から一刻も早く抜け出したかった。
そんなある日、大学の図書館で彼は「地球の危険な歩き方」という1冊の本に出会う。
そこでNYの犯罪都市「HAZARD」について書かれたページを目にする。
0cm4
視覚障害を正常に戻す為の手術を1週間後に控えた前田は、それによって自分の中にある色のイメージや世界が変わってしまうのではないか、即ち自身のリアリティが失われることに不安に感じていた。
「正しい色に定義などない。1人1人が見ている色は、みな違っている筈だ」 そこで、彼は彼の色調に合わせたヴィデオカメラで、彼の世界を記録することを思い立つ。
園子温 SION SONO
17歳で詩人として、「現代詩手帖」、「ユリイカ」等に投稿し、「ジーパンを履いた朔太郎」と評される。
1987年、『男の花道』でぴあフィルムフェスティバルグランプリを受賞。
PFFスカラシップとして制作された『自転車吐息』がベルリン国際映画祭で正式招待作品となるなど、90年代にはインディーズ系映画界を席巻。
2001年以降はメジャー映画会社とも手を結び、代表作には『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』がある。
役者への演技指導が厳しく、作品の為には納得のいく演技が出るまでOKを出さず、罵声を浴びせることもあるが、役者によってはほとんど演技指導がないこともある。
恋の罪 渋谷円山町
恋の罪は、1997年に渋谷円山町で起きた実際の殺人事件にインスパイアされオリジナルのストーリーを作られた。
前作『冷たい熱帯魚』の時にも実際に起きた事件が題材でした。
「殺人」の猟奇性に特化するより「家族関係や社会問題」におもむきを置いて人間関係を描きたかった、と監督がインタビューで話されていた。
『恋の罪』では「女性」にフォーカスをあてながらも、同じく「人間関係」の背景的なものを描く。
女性というのは男性よりも色々な意味で抑圧があると思う。
社会的な抑圧だったり、性の抑圧だったり、家庭内の抑圧だったり…。
彼の映画は現代のリズムに合っていると思う。
自然を貴ぶ時代には、詩も文学、絵画、音楽が写実的で、道徳的で、美しい。
近代はこのような荒々しさもいいかな、と思う。
渋谷円山町は10年くらい住んでいたが、確かに殺人事件があった。
今はそのアパートが残っている。
家賃が安いみたいだが、気にしない人は、気にしないのだろう(笑)
ちゃんと人が住んでいる。