東京百景 又吉直樹 杉並区馬橋公園の薄暮
八年程前、有明で若手のネタライブがあった。
ライブ前に、僕たちは階段の踊り場でネタ合わせをしていた。
すると、さらに上の階段から「おい!」と呼ぶ声が聞こえたので、上を見上げると、知らない男が僕を見下ろし「リハ何時から? ...
東京百景 又吉直樹 高円寺中通り商店街
共同トイレを掃除するという条件で家賃を五千円引いて貰い、二万五千円のアパートに住んでいた。
だが他人が汚した便所を掃除するのは精神的に苦しかった。
時折掃除した翌日に汚されていたりすると、これは隣人の汚物攻撃なのではな ...
東京百景 又吉直樹 高円寺の風景
人情と奇妙奇天烈を標榜する高円寺いう町がある。
徳島の名物である阿波踊りを、「高円寺阿波踊り」と称し、町おこしを図っていることからも自由奔放な気風と解る。
例えば夏の夜半過ぎ、誰もいない高円寺駅前の公衆便所で用を足して ...
阿佐ヶ谷・高円寺・書簡演劇・寺山修司
フレンドリック・ブラウンの小説に、ある男に見知らぬ差出人から毎日手紙が届き、それによって次第に人生が変わっていく、というのがある。
私もまた、そうした手紙の差出人になって、平和な家庭に一つの虚構を持ち込んでみたいと考えた。
杉並区・高円寺・地球空洞説 寺山修司
天井桟敷の公演『地球空洞説』は1973年の8月杉並区高円寺南の公園にて街頭劇として上演されていた。
私は、ボルヘスの「伝記集」の愛読者だが、ボルヘスは迷路を解くカギとして、「もう一つの迷路」を指定する。
曲がりくねった ...
高円寺・阿佐ヶ谷・杉並区と寺山修司
市外劇「ノック」の戦略
1975年4月19日、杉並区一帯を用いて上演された市街劇「ノック」はちょっとしたスキャンダルとなった。
当時の新聞を見ると、サンケイ新聞の見出し六段抜きで「天井桟敷演出オーバー、フロ屋さんもびっ ...
演劇実験室 天井桟敷 A LABORATORY OF PLAY
僕が芸術を愛し始めたのは「寺山修司」という人物に出会ってからです。
彼は青森で生まれ、幼少より7・5調で会話をし、演劇・コラム・詩を通して言葉の達人になろうとしていた。
現代にも通ずる彼の言葉の錬金術師として生み出して ...